これは「mstdn.maud.io Advent Calendar 2024」16日目の記事です。この記事は1日目に持ってくるのはちょっとアレな気がしたので没にしたやつです。
昨日はぬぬちゃんの「VRChat末期中毒患者が、知識ゼロから1年で英語が話せるようになった話」でした。引き続きVRChatネタでいきます。【2025/01/12追記】失念してたソースを教えていただいたので追記。
皆さんVRChatは楽しめていますか?VRChatはデスクトップモードでも遊べますが、やはりVRモードで遊ぶのが一番って事で、VRで遊べる環境を整えていることかと思います。
さて、ここ数年の間にPC周りの情勢が大きく変わりました。VR関連もかつてはHTC VIVEやValve Indexが主流でしたが、現在はMeta Quest 3がメジャーなVR機器となっていますね。もちろん今の主流を押さえておけば楽な場合もありますが、実は「二番手選手」も魅力的なんです。
将来、もしかしたら輝くかもしれない第二の選択肢。割とそんな機器が多め(?)な自分のPC環境を使ってご紹介します。
メジャーな組み合わせってなんだろう
これからPCも含めてVR環境を整えようと思うと、どんな構成が思いつくでしょうか。
個人的なイメージとしては、PCはIntelのCPUとNVIDIAのGeForceを搭載してMeta Quest 3を接続するのが多数派なのかなと思いますが、最近だとCPUはAMDのRyzen X3Dシリーズを選ぶのが鉄板になっているように感じます。
フルトラも視野に入れると、昔からやっている人はベースステーションがあるのでVIVEトラッカーを追加する事になります。ですが、完全新規の場合は精度重視ならVIVE トラッカー(Ultimate)、価格重視ならHaritoraXワイヤレスやmocopiを選ぶ感じになるのかなと思います。
一番人気ではない(なかった)が人によっては刺さる二番手
AMD Ryzen
ここ7年ほどで着実に成長
えー、いきなり既にメジャーになっている物が出てきましたが、以前はゲーム向きといえばIntelでした。AMDはここ数年で人気が高まり、デスクトップCPU市場で3割近いシェアを占めるようになりました。サーバー向けもほぼゼロスタートの状態から現在は3割に迫る勢いです。
AMDのRyzenが発売されたのは2017年のこと。その時も「ゲーミングならIntel」と言われ続けていましたが、2020年頃にはどちらとも言えない感じに変わり、2022年の「Ryzen 7 5800X3D」の登場で完全に逆転することとなりました。Intelが失敗をしていなかったとしても、AMDを選ぶ人は居るんじゃないかなと思います。しかし何が起こるか分からないね。
要求スペック青天井なVRChatにも強い
ゲーミングといえばもちろん、VRChat用途でも御用達なX3Dシリーズは最新作の「Ryzen 7 9800X3D」が2024年11月15日に発売されたばかり。大容量のCPUキャッシュが搭載されたこのCPUはゲーミング最強と謳われているシリーズなだけあって、VRChatでも大いに活躍します。
初代となる「Ryzen 7 5800X3D」は既に型落ちの古いCPUですが、現在自分が使っているAM4世代のマザーボードで扱えるCPUとしては最もVRChatに適していると思われるものです。
「VRChatはUdonを使っているとメモリアクセスが頻繁に発生してボトルネックになるかもよ?」って話を聞いたことがあります。ガベージコレクションが走りまくってるとかなんとか。自分でコードの読み書きや検証をしたわけではないので確認できていませんが、VRChatのように最適化が不十分なタイトルではとりわけCPUキャッシュが多いRyzenのX3Dシリーズがとても有利に働くという事のようです。(※5800X3Dの場合はL3キャッシュが96MBあり、4MBのL2キャッシュと合わせると100MBになる。)
マザーボードをAM5世代に移行すれば、現時点ではゲーミング最強と言っても過言ではない9800X3Dが選べます。これまではヒートスプレッダとダイに挟まれていた3D V-Cacheが熱で壊れてしまわないように制限が掛かっていましたが、9800X3Dからは設計が第二世代となり3D V-Cacheがダイの下に配置できるようになりました。これにより熱問題もクリアし、さらなるパワーアップを果たしています。今後も楽しみです。
AMD Radeon
去年も書いたって?そうだよ。割と熱心に情報収集していましたが、お勧めしやすくなってきた感じがあります。
じわじわと良くなりつつある
PlayStationやXboxといった家庭用ゲーム機では採用されているものの、PCゲーミングにおいてはあまり人気のないAMD Radeon。ゲームに必要な純粋なラスタライズ性能に重きを置いているため、AI用途には不向きですがコストパフォーマンスが高いです。VRゲームには使えませんが、「AMD Fluid Motion Frames 2(AFMF 2)」というドライバーレベルでのフレーム生成といった魅力的な機能も追加されました。
PCゲーミングといえばNVIDIAのGeForceが定番です。ただ、聞くところによると、昔の評判に囚われない若い人を中心に人気が高まっている……らしいです。(※ソース失念)
![](https://ascii.jp/img/2024/10/24/4108293/xl/725fba8a68b314d9.jpg?20200122)
11月に秋葉原で行われたAMDのイベントでは、VRChatで使う人が増えているという話も話題に上がっていました。
自分は2023年の3月からRadeon RX 6800を購入して使っていました。軽い気持ちでGeForce RTX 2080から乗り換えたのですが、気に入ったのでRadeonを愛用しています。現在使用しているのはRadeon RX 7900 GREというモデルです。VRAM 16GB、約9万円、ヨシッ!でも既に売り切れたみたい。
性能的な競合はGeForce RTX 4070 Superだとかなんとか。でももう少し足して11万出せば20GBのRadeon RX 7900 XTが買えるので、あえてRX 7900 GREを選ぶ必要性はちょっと薄いように思います。 色々な都合でRX 7900 GREを買って結構気に入ってますが、Vketのようなリソースを食い尽くすVRChatのワールドを巡るとなると、やはりあと2~3万円ぐらい足してRX 7900 XT(20GB)を買った方が良いです。
7900シリーズのパワーを持ちつつも、WQHDでのゲーミングをターゲットに幾らかコストカットを行ったRX 7900 GREですが、性能的にはVRChat目的でもまぁまぁ頑張れますね。
VR方面でもいくらか進展あり
最近VR関連で少し動きがあり、SteamVRでダイレクトモードを使用するVRヘッドセットではPhoton Latencyが高くなってしまう問題がほぼ解決したようです。これは2年前にNVIDIAのGeForce RTX4000シリーズでも起こっていた問題で、ヘッドトラッキング時に遅延が入る事で頭の動きに対して映像が僅かに遅れてついてくる現象が生じていました。GeForceの時はSteamVR側で修正が入ってた気がします。非ネイティブヘッドセットのMeta Questなどでは関係のない問題です。
まだ不十分という声もあるようなので、気になる方はフィードバックをした方が良いですね。
![](https://www.amd.com/system/files/2020-02/amd-black-logo-media-1260x709.png)
QuestなどでPCVRをするときに重要なハードウェアエンコーダーの性能も、画質という点ではGeForceに負けているのが現状です。ただ、決して使い物にならないような品質ではありませんし、VRストリーミングは高ビットレートで使うという理由もあってそこまで悪くはないです。また、GPU負荷が最大になってもエンコーダー側の動作にそれほど影響がないようです。(ダレたりしない感じ)
で、VRChat用に買っても大丈夫なの?
さて、いくらコストパフォーマンスが高くてもちゃんと動かないと意味がありません。昔と比べて多くの問題が修正されましたが、不具合ゼロというわけではありません。ぶっちゃけ何か困ったことがあるかと言われると、GeForce使っていた頃と特に変わりはないです。
今のところVR関連で困るかもしれないのは以下の通りです。
- Virtual DesktopのHEVC 10-bitモードが正常に動作しない。フリーズしたり片目だけ画面がチラつくが、10-bitじゃなければ問題はない様子。H.264やAV1 10-bitなら大丈夫なはず。残念ながらこれはドライバの不具合との事。こちらもそろそろ動きがあってもいいんだけれども。
- 「MeganeX superlight 8K」などの一部のVRヘッドセットが利用できない。回路の都合。
- ごく一部のシェーダーが正常に描画されない事がある。とはいえ、頑張って探さない限りはまず遭遇することはないし、シェーダー関連で困ったことはないかな。
- D24_UNORM_S8_UINTの深度テクスチャフォーマットは対応していないので、VRChatでこれを使ったワールドに遭遇すると入った瞬間落ちる。
まぁ、去年Radeonの話を書いたときと大体一緒ですね。色々と思うところはあるので、時々フィードバック飛ばしてます。最近不具合が解消したのはゼンレスゾーンゼロの表示不具合とかですかね。
来年発売されるRX 8000シリーズは、RX 7900 XTXのようなハイエンドモデルは出ないと聞いています。噂ではRX 8800 XTが、RTX 4080並の性能で500~600ドルぐらいになるのではないかと言われているので、VRAM16GB枠の中では有力な選択肢となるかもしれませんね。欲を言えばエンコーダー周りにテコ入れがあって欲しいところです。
![](https://blog.pikegadge.com/wp-content/uploads/2023/11/VRChat_2023-11-29_15-16-09.700_2560x1440-320x180.png)
PICO 4 UltraとPICO Motion Tracker
PICO 4 UltraはMeta QuestシリーズのようなスタンドアロンタイプのVRヘッドセットで、PCとは無線または有線で繫いで使用します。同種の製品としてはHTC VIVE Focusシリーズなどがあります。元々中国でシェアの高かったブランドですが、日本でも存在感を増すようになりました。
装着感の良さが売り、もしくはフルトラ入門用として
VRヘッドセットを着用したときに「身体への負担が非常に小さい」という点が自分にとって大きなメリットだったため、Quest 3ではなくPICO 4を選んだ経緯があります。顔面に何も触れない状態で被れるという部分が助かっています。
自分はしばらくの間PICO 4を使っていましたが、装着のしやすさと身体への負担の少なさはPICO 4 Ultraになってもしっかりと受け継いでいます。主な変更点は以下のような感じ。
- MR用のシースルーカメラの立体視対応と品質向上
- コントローラーのリングがなくなった(Quest 3同様にトラッキング性能は落ちた気はする)
- SoC性能をQuest 3相当のものにアップグレード(Snapdragon XR2 Gen2)
- PCVRストリーミングでAV1コーデックに対応
- ディスプレイの輝度と色合いがより良くなった
- Wi-Fi 7対応
- Android 10からAndroid 14ベースになった
PICO 4のときにあった価格的な優位性がなくなったので、PICO 4 Ultra単体では「使うのが楽なヘッドセット」という部分しかセールスポイントがないのですが、PICO Motion Trackerという足首に2つ(オプションで腰に1つ追加可能)取り付けるだけの専用アクセサリーが販売されています。
腰などは仮想トラッカーを用意してくれるので、足首2点だけでOKなのが嬉しい点。腰への取り付けがないだけでも身体がとても楽で、いつも快適にフルトラしてます。この安価(1万円)でお手軽な専用トラッカーのお陰で、PICOはVRChat向けのVR機器として再注目されています。これが大成功すれば、Quest用にも手軽に使える専用トラッカーが出てくるかもしれませんね。
帯電する持病はあるけど、やたらと丈夫
PICOのコントローラーは頑丈なことに定評があります。長年酷使してるけど未だにドリフトしてないとか、落としても壊れてないとかよく耳にするので、割と安心して使っています。国内ではコントローラーの単品販売をしてないのが気掛かりとはいえ、壊れるまで使い込んだらもう替え時なんじゃないかと。
そうそう、知り合いにスティックがもげるまで使ってるめうるみの人が居ますが、これでもスティックそのものに問題はないとのこと。えぇ……?
帯電しやすいという持病はあるのですが、バインド変更で簡単に対処できるので致命的って事はないです。
次が出るのかはかなり怪しいが、現時点での有力候補
PICOはスタンドアロン型製品としては、利用者数ダントツのQuestの次に利用者が多そうな感じ製品で、快適さが気に入って使っている人は多いようです。最近だとPICO 4 UltraとPICO Motion TrackerでいきなりフルトラでVRChatデビューする人が多く、Quest 3や3Sから乗り換えて2台持ちになってしまった方にも会ったことがあります。 まぁ頭がケルベロスな人は自分の周りに沢山居るので、別におかしくはないですね!(?)
VIVEの方はというと、少なくとも国内ではVIVEトラッカーやVIVEトラッカー(Ultimate)目当ての方が多いようで、VIVE Focusシリーズ本体はそうでもない様子。VIVEトラッカー(Ultimate)はLighthouse方式ではありませんが、ベースステーションを使用しないトラッカーの中では精度が高い方なので、VRChat用途ではこちらが主流になりそうな予感がします。価格的に高級おはぎなのが玉に瑕。
個人的な考えとしては、今から新規に買うならPICO 4 UltraとPICO Motion Trackerかなと思いますが、1~2年すると状況が変わってくるでしょうから、その時になったらまた乗り換え先を選ぶつもりでいます。PICO 5が出るかどうかも分かりませんし、Metaがより画期的なQuest 4を出してくれるかもしれません。もちろん、HTC VIVE Focusシリーズの進化にも期待したいところです。
直近のニュースではSamsungがAndroid XRを搭載したヘッドセット(コードネームはMoohan)を発売する予定とのことですが、見たところPCVR用途で使えるかどうかは、扱いやすい専用コントローラーが出るか次第ではないかと考えます。あとは、Horizon OS搭載のヘッドセットがいくつ出てくるのかも気になりますね。
![](https://img.global.news.samsung.com/jp/wp-content/uploads/2024/12/Samsung-Mobile-XR-Project-Moohan-Android-XR-platform-Google_Thumbnail1000.jpg)
2~3年はしっかり使い込んで、壊れ次第その時のベストだと思う製品を選択していく考えもありだと思います。(ケータイオタク的なノリ)
ソフトウェアも……?
ALCOM
VRChat Creator Companion(VCC)の非公式代替ソフトウェア。恐らくVCCの代替はこれしかないはずなので、もれなく二番手(?)になりますが、何故だか自分の周りにはALCOM使いしか居ない気がします。
あらゆる操作が瞬間的に終わるので、非常に重宝しています。日本で開発していることもあり、少なくとも日本語環境起因の不具合とかは起こりにくいんじゃないかなぁって思ってます。VCC使う理由ある?(強火の発言)
SlimeVR / SlimeTora
HaritoraXワイヤレスを公式のソフトウェア(Haritora Configurator)以外で使う非公式な手段。SlimeVRの方はこの手のソフトウェアとしてはメジャーなものだと思うので、そういった意味では二番手ではなさそうですね。
![](https://blog.pikegadge.com/wp-content/uploads/2024/04/slimetora-320x180.png)
自分はHaritoraXワイヤレスをSlimeVRに接続するソフトウェアであるSlimeToraの日本語訳をお手伝いしました。 個人的に、HaritoraXワイヤレスはSlimeVRで動かした方が快適に動かせる気がしますね。ただ、現在はVR Managerという新しいソフトウェアが開発中なので、今後が楽しみではあります。
Affinityシリーズ
AffinityはPhotoshopなどのAdobe製品の代替ソフトウェアとして選ばれています。現在はバージョン2がリリースされており、ベクター系のDesignerと画像編集のPhoto、そしてパンフレットなどの資料作成に特化したPublisherの3つがあります。大きな特徴は買い切りのソフトウェアであることで、次のバージョンが出るまでの間は無料でアップデートが行われます。今年の3月にCanvaに買収されたことが話題になりましたが、永久ライセンスでの販売は続けるとのこと。
VRChat用途では、アバターの改変をするときにテクスチャの編集用途でAffinity Photoを使う方がいらっしゃるかと思います。テクスチャはCLIP STUDIO PAINTで作られていることもあるので、そちらを使うこともあるでしょう。自分はAffinity Photo/Designerをブログ用の画像制作で使うことが多いです。イラスト制作ではクリスタがデファクトスタンダードになっていますが、有料の画像編集ソフトとしてはAffinityが二番手なのかなと。
概ね問題なく動作するAffinityですが、個人的に気になる欠点に「レイヤーフォルダへのクリッピングマスクに対応していない」事があります。
簡単な例を紹介すると、こういった形でレイヤーフォルダに対してクリッピングマスクを設定したデータを作るとします。青い四角形に対して赤い四角形が重なっていますが、クリッピングマスクとして設定しているので赤い四角形は青い四角形と重なっている部分だけが描画されます。
問題は、直接青い四角形に対してクリッピングマスクしているのではなく、レイヤーフォルダに対してクリッピングマスクを設定していることにあります。これをAffinity Photoで開くと以下のようになります。
残念なことに、赤い四角形がレイヤーごと消滅してしまいました。せめて通常レイヤーとして残しておいてくれると良かったのですが……。クリッピングマスクは割と便利な機能なので、つい使用してしまう機能です。同梱する改変用データとしてPSD形式を使うのは適切かどうかはさておき、データを作る側に立った際はできるだけ単純なレイヤー構成を心掛けたいですね。
ちなみに、どうしようもなくて困ったときはPhotopeaで開くのも手です。Skebで納品されたPSDを開くときに使われてたりします。
ところで、半額セールはこの間終わりました。メールではこれが最後のチャンスで半額セールは二度としないと言っていたのですが、どうなんでしょうね。
![](https://cdn.serif.com/affinity/img/home/og/og-all-080820220738.png)
自分に合ったものを選ぼう
VRChat用途という時点であまり一般的ではないので、いつもと違うものを選んでみた方が良いこともあると思います。そういった物の存在を知らなくて機会損失してしまうのは勿体ないかなと思って書きました。二番手選手のが自分の目的に合ってそうだと感じた方も居れば、やっぱ一番人気な製品が自分にピッタリだと改めて思った方も居ると思います。
どの製品も長所は素晴らしいものです。しかし完璧な製品というのは存在しません。壊れやすかったり、サポートが悪かったり、あるいは馴染めないこともあるでしょう。自分にとってのメリットとデメリットを天秤に掛けて、十分に検討したいですね。
mstdn.maud.io Advent Calendar 2024の16日目(おかわり)でした。明日は上原桜子さんです。