日本時間の2025年10月30日、「AMD Software:Adrenaline Edition 25.10.2」がリリースされました。
Ryzen AI 5 330のサポートやBattlefield 6などの新しいゲームへの対応のほか、Vulkanサポートの拡張と不具合の修正などが多く含まれています。これらの新規対応はRX7000シリーズとRX9000シリーズで利用できます。

ダウンロードとインストール
現在は統合版ドライバーへのリンクに変わっていますが、リリースノートのリンクからダウンロードしたタイミングによってはRDNA3用のインストーラーが落ちてきている場合があります。
「whql-amd-software-adrenalin-edition-25.10.2-win10-win11-oct-rdna3.exe(903MB)」がRDNA3用で、「whql-amd-software-adrenalin-edition-25.10.2-win10-win11-oct-rdna3-combined.exe(1.56GB)」が統合版です。
リリースノートからではなく、「AMD Install Manager」を使用するかドライバーのダウンロードページから自動検出ツールをダウンロードしてアップデートすることをおすすめします。

RDNA1/RDNA2がメンテナンスモード(レガシーサポート)に移行
このような状況となった背景として、RDNA1/RDNA2アーキテクチャ(Radeon RX5000シリーズと6000シリーズ)がメンテナンスモードに移行したことが判明しています。
PC Games HardwareがAMDに問い合わせたところ、次のような回答を得たとのことです。
“RDNA-1- und RDNA-2-Grafikkarten werden weiterhin Treiber-Updates für kritische Sicherheits- und Fehlerbehebungen erhalten. Um sich auf die Optimierung und Bereitstellung neuer und verbesserter Technologien für die neuesten GPUs zu konzentrieren, versetzt AMD Software Adrenalin Edition 25.10.2 Grafikkarten der Serien Radeon RX 5000 und RX 6000 (RDNA 1 und RDNA 2) in den Wartungsmodus. Zukünftige Treiber-Updates mit gezielten Spieloptimierungen werden sich auf RDNA-3- und RDNA-4-GPUs konzentrieren.”
今後は重要なセキュリティの問題と不具合の修正に焦点が当てられ、新しいゲームや新機能のサポートはRDNA3以降を対象に重点的に行われるようです。
メンテナンスモードへの移行があまりにも早い気はしますが、残念ながらこういうのはGPUに限った話でもないので、最初の製品が発売してから5年ぐらいが限度だろうなと思うことにしています。
ここ数年でGPUに求められる事が多くなりすぎているように感じます。個人的にはRDNA3ですら最近の動向にどこまで追従できるのか怪しい感じがしますので、RDNA2未満がついて行けなくなってきているのは仕方がないのかなと考えています。

【追記】RDNA1/RDNA2のサポートが切られるというわけではない
当然ながらこの「メンテナンスモード」に対するコミュニティからの反発や混乱がありました。
Tom’s HardwareへのAMDからの回答によると、「新機能やバグ修正、ゲームの最適化は、メンテナンスモードブランチでも市場ニーズに応じて引き続き提供される」と内容をより明確にしました。ASUS ROG AllyといったハンドヘルドPCのようなデバイスも含め、今後もサポート自体は継続されます。RDNA3/RDNA4のような新しいGPUでの新機能の開発により集中するために、古いGPUはブランチを分けたといったところでしょうか。対象を絞った方が開発がしやすそうなのは想像がつきます。
「顧客ニーズに応じて」という言い方が非常に曖昧で悪い部分ですが、一部の新機能は対応されなかったり、新しいゲームへの最適化がRDNA3/RDNA4と比べて遅くなったりする可能性はありそうです。(ゲームサポートもこれまで通りゼロデイでの対応をするとも言っているので、基本的には意図的な遅延はないはずですが。)RDNA3以降と比べると、緊急に必要があったときに対応がされるという感じになることが予想されます。
ひとまず、今後はRDNA1/RDNA2の優先順位が低くなるという認識でいれば良いかと思います。


【追記2】AMD公式からの発表
AMD公式からこの件について発表がありました。
- 新しいリリースのゲームサポート
- 安定性とゲームの最適化
- セキュリティとバグの修正
この3点はこれまで通り行われるとのことです。このような変更に至った背景としては以下の点が挙げられています。
- RDNA1/RDNA2は長年のチューニングと最適化がされている
- RDNA1/RDNA2の安定性を維持しつつRDNA3以降の新機能開発をしやすくする(大きな変更から隔離する)
新機能の開発に集中しやすくするほかに、新しい製品の都合に巻き込まれることで、これまで培ってきた安定性を損なうようなことは避けたいという考えが感じられます。

ドライバーのブランチが切り替わる大きめのアップデート
25.10.2のドライバーバージョンは25.20.21.01(32.0.22021.1009)です。25.5.1から25.10.1までは25.10.xx.xxだったので、ブランチが切り替わっています。大きめの変更を伴うアップデートとなっていますので、ダウングレードを行う必要が生じた場合は、「AMD Cleanup Utility」を使用することが推奨されています。(※代わりにDDUを使う場合は、25.10.2の変更に対応した新しいバージョンを使用すること!)
Vulkan Extensionも幾つか追加されており、以下のような項目が新たにサポートされました。
- VK_EXT_shader_float8
- VK_KHR_video_decode_vp9
- VK_KHR_video_encode_av1
- VK_KHR_video_encode_quantization_map
- VK_AMDX_dense_geometry_format
- VK_KHR_shader_untyped_pointers
- VK_KHR_present_mode_fifo_latest_ready
- VK_EXT_present_mode_fifo_latest_ready
- VK_KHR_present_id2
- VK_KHR_present_wait2
Vulkanには詳しくないので大雑把な認識ですが、シェーダー内でのFP8に対応するといったAI関連で有用な機能の他に、VulkanでAV1などのエンコードなどに対応する動画関連の機能、遅延・ティアリングを抑えるときに使うモードなどが新規にサポートされているようです。

その他にはRadeon RX9000シリーズでの「Work Graphs」の初回対応が含まれています。RX7000シリーズでは24.6.1のときに対応していたものですが、その技術的な内容については以下の記事が詳しいです。

一部のVRヘッドセットでスタッターが生じる不具合が修正
VR関連では、25.4.1から既知の不具合となっていた「一部のVRヘッドセットを80Hzや90Hzで使用すると、スタッターが生じる可能性がある」という問題がようやく修正されました。「VTOL VR」の描画不具合も修正されています。
【検証】disable-amd-stutter-workaroundの有無をテスト
VRChatでは、昔からAMD Radeon環境で発生していたスタッターを回避するための「少々ハッキーな回避策」が自動的に有効になっています。そして、このハックをあえて無効にするための起動オプションとして「–disable-amd-stutter-workaround」というものが存在します。
--disable-amd-stutter-workaround
VR関連の大きな修正があったAMD Software 24.12.1以降、この起動オプションを使用した方がパフォーマンスが向上してスムーズに動く可能性があります。特にPICO Connectにおいてはスタッターやフレームレートの低下が生じにくくなる効果が確認できています。
もちろん何も変化がない環境もありますが、RX6000シリーズにおいても有効な場合があるようです。
PICO Connect 10.6.6とVirtual Desktop 1.34.10において、「–disable-amd-stutter-workaround」の有無でどのような変化があるかを確認しました。
テスト内容について
テストではVRChatのワールドである「Avatar Museum 12」を使用し、予め片道分のアバターを一度表示してキャッシュしています。最初にVRChatのメニューを10回出し入れを行い、そのあと3倍速でワールドの端まで移動するだけのシンプルなテストとなります。
CPUはRyzen 9 7950X3D(※VRChatをCCD0に固定)で、GPUはRadeon RX7900XTです。VRヘッドセットはPICO 4 Ultraを使用します。
PICO Connectでのテスト結果
PICO Connectでは、「–disable-amd-stutter-workaround」を使用すると定期的に発生するフレームタイムのスパイクが抑えられ、スタッターの割合が0.5%から0.2%まで低下しました。
CapFlameXで真面目に計測したのはこれが初めてですが、起動オプションを使って回避策を無効にした方が僅かに良くなるのは24.12.1のときから大きく変わらないはずです。体感ではどちらも大して変わらないように思います。
Virtual Desktopでのテスト結果
Virtual Desktopでは違いが顕著で、スタッターの割合が1%から0.1%まで大幅に低下しました。
現在のドライバー(25.10.2)ではVRChatのスタッター防止策が上手く機能しなくなっている可能性があり、防止策を無効にしないとVRChatのメニューを出し入れなどでスタッターが生じます。
疑わしいのでドライバーの入れ直しも行い、2回目を測定しました。
最初の10秒ほどでメニューの出し入れをしているのですが、「–disable-amd-stutter-workaround」使用時は、メニューを閉じた状態になってからフレームタイムが完全に落ち着くまで少し長引く傾向にあるようです。Virtual Desktopでここまでハッキリとした差が出るとは思っていなかったので、正直なところ驚いています。
ただ、『日本語話者向け集会場「FUJIYAMA」JP』を訪れてみたところ、多人数のパブリックインスタンスでは違いが分からないかもしれません。
パブリックインスタンスで検証している都合上、多種多様な構成のアバターが存在していることやそれらの読み込みなどでスタッターするのは避けられません。負荷の掛かり具合も毎回異なるので正確な比較ではないのをご了承ください。もう少し引きで見ると若干の差はありますが、このような場面では視覚的な差は感じにくいことかと思います。
25.9.1と25.10.2で比較
25.9.1と25.10.2のデータを比較してみます。
起動オプションなしの状態、つまりVRChatのスタッター回避策が動作していると逆にスタッターが起きて悪化する傾向が見られます。25.10.2になってからの変化は、もっと別のパターンでデータを集めないとハッキリとしたことは言えなさそうです。
テスト結果から考えられること
検証方法とデータ量が不十分ではありますが、VRChatのスタッター回避策が裏目に出ているような様子が見られました。そもそもVRChat曰く「少々ハッキーな」回避策なので、ドライバー側の挙動が変わったことで想定通りに機能しなくなったとしてもおかしくはないです。今回は無線のVRヘッドセットで検証していますので、DisplayPortに接続するタイプのVRヘッドセットと25.10.2での動作については不明です。VR時のスタッターに関する不具合修正は、主にそちらで変化があるものなのかもしれません。
ひとまず、現時点(2025年10月30日)では「–disable-amd-stutter-workaround」を使用してVRChatのスタッター回避策を無効にした方が上手く動作する可能性が高そうです。但し、視界が一瞬点滅するなどの現象が起きるようであれば、このオプションを使うのを辞めた方が良いでしょう。もちろん使用するCPUなどのPC構成によっても動作の具合が変わってきます。考えなしに起動オプションを適用せず、快適に動作すると感じられる方を選ぶことをおすすめします。
セキュリティパッチなど
不具合の修正の他に、幾つかのセキュリティパッチが適用されています。
- CVE-2023-4969 (RDNA only)
- CVE-2024-21969 (RDNA only)
- CVE-2024-36323
- CVE-2024-36325
- CVE-2024-36333
- CVE-2025-61964
- CVE-2025-61965
- CVE-2025-61966
- CVE-2025-61967
- CVE-2025-61968
また、Windows 10のサポート終了に伴い、25.10.2ではWindows 11 21H2以降のサポートのみ掲載されており、Windows 10は明記されない形となっています。これは単にサポート対象として主張しなくなっただけなので、Windows 10でも引き続き利用可能とのことです。

AMD Noise Suppressionが動作しない不具合
既知の不具合に含まれていない情報として、25.10.2ではAMD Noise Suppressionが壊れており、動作しない不具合があるようです。AMD Software内でスイッチを入れても有効に切り替わらないはずです。AMD Noise Suppressionを使用したい場合は、25.9.1まで戻す必要があります。
USB Type-Cからの充電の問題は誤報
RX7000シリーズでUSB Type-Cからの充電機能を使いたい場合は、25.3.1を使用するよう記載がありましたが、誤報だったとのことなので現在はリリースノートから削除されています。
We’d like to inform you that the release notes for AMD Software Adrenalin Edition 25.10 2 posted included misinformation that has since been corrected. There is no change to USB-C functionality on the RX 7900 series GPUs in the 25.10.2 driver. There was an incorrect line in the originally posted release notes that has been removed, and the release notes have been updated.
2025/10/31:RDNA1/RDNA2がメンテナンスモードに入ったことと、リリースノートの誤りについて追記
2025/11/01:メンテナンスモードについて訂正があったため追記
2015/11/03:AMD公式からの発表を追記













