皆さん、2024年9月20日は何の日かご存じでしょうか。そう、iPhone 16 PICO 4 Ultraの発売日ですね!価格は89,800円です。自分は予約はしたので発売が楽しみです。(最速でも発売日翌日着予定になるし、トラッカーは後日発行のクーポン扱いだし、延長保証も無いからAmazonじゃない方が良かったって?そうかも……。)
今回はPCVR、特にVRChat目的でPICO 4 Ultraを購入するのはどうなのかについて、前モデルとなるPICO 4を基にご紹介したいと思います。他の製品からの乗り換えや、初めてのVR機器として検討する際の参考になれば幸いです。MRの機能やストアでダウンロードできるゲームなどについては触れておらず、VRChat目的に絞ったつもりでしたが調子に乗って色々書いてしまい、2万字を軽く超えました。とてもとても長いです、はい。
目次から適当にかいつまんで読んでください。
【追記】PICO 4 Ultraを入手したのでその辺りの情報を付け加えておきました。
- トラブル解決の情報を探していて本記事へ辿り着いた方はこちら
- PICO Connectの情報を求めている場合はこちらへどうぞ
「軽さ」と「着け心地」は抜群
バッテリーが後ろにあるので重量バランスが良い
全てのコンポーネントを前方に詰め込んであるMeta Quest 3と異なり、PICO 4はバッテリーを後方に移動してカウンターウェイトとすることで重量バランスの良い設計になっています。バッテリーがある後部ストラップにはダイヤルがあり、締め付け具合を調節できます。丁度Quest Proと同じような感じですね。素の状態でEliteストラップ付きのような状態で重量バランスも良い、PICO 4の着け心地が最高だと言われている理由はこれです。
純正の状態でも楽に感じられますが、後頭部のクッションが硬いので、サードパーティー製品に替えている人は居ます。全体の重さは580g程(PICO 4 Ultra)で、内訳はフェイスカバーを含めた前部が304g、ストラップやバッテリー、クッションを含む後部が276gとの事です。全体重量は515gとQuest 3のが軽いのですが、Eliteストラップを取り付けると600gちょっとになって大きく変わりませんし、バッテリーも前にあるので前方に500g程度の重さが掛かるという違いがあります。
自分はPICO 4に拡張バッテリーが取り付け可能な「BOBOVR P4」などを取り付けて使用しているのですが、フェイスカバーと拡張バッテリー無しで724g、拡張バッテリーありで863gという重量となっています。それでも前後のバランスは良いのでとても軽く感じられます。PICO 4 Ultraでも形状は変わらないと思っていましたが、後頭部のバックプレートが上手くはまらないとの事で、互換性はありませんでした。
BOBOVR P4類似品で「KKCOBVR P4」というのもありました。Amazonで買うと倍額してしまうので公式から購入するのが良いでしょう。BOBOVR P4は5,200mAhのバッテリー2個+充電器で、KKCOBVRは10,000mAhのバッテリー1個です。BOBOVRと同様に5V/2.6Aの出力ですが、KKCOBVR Black P2 Batteryという別売りのバッテリーは3A出力になっているようです。
【2024年9月18日追記】ミスターVR氏によると、PICO 4 Ultraはバックプレートのツメ穴が違うのでBOBOVR P4は取り付けられないそうです。他の類似品も使えない可能性が高いので、拡張バッテリーに限らず後頭部のプレートを交換したい人は専用品が出るまで我慢することになりそうです。残念。
平たい顔族の作ったHMD
ByteDance傘下のPICOは中国の企業です。我々日本人と同じアジアの人達に合わせているのか分かりませんが、鼻の隙間が大きく開くことなくピッタリとフィットします。
PICO 4 Ultraではカラーシースルーモードの画質が向上して立体視できるようになりましたので、HMDを被ったまま周囲を確認したり、PICO ConnectでPCやスマートフォンの画面をミラーリングすることも可能です。(※スマホのミラーリングは今後のOTAで実装予定とのこと)
もし、鼻の隙間から直接外を見ながら利用したい場合は、額で支えるためのヘッドストラップを取り付けてフェイスカバーを外すという使い方もできます。
当然ながらメーカー推奨の使い方ではありませんが、前述したとおり前後のバランスが良い構造をしているのでそのような使い方が容易に行えます。自分は肌が荒れやすいので普段はフェイスカバー無しで使っていますが、MR目的で使用するときはその方が上手く馴染むかもしれませんね。
排熱やファンの音について
PICO 4では排熱やファンの音は殆ど気にならない(しっかりと回ってる音がするのは分かります)のですが、気になる人は気になるかもしれません。純正のフェイスカバーをして比べたところ、PICO 4 Ultraの方が熱が篭りにくくてレンズが曇ったりしにくいような気がしました。まだ短時間なのでなんとも言えませんが。
「視野の広さ」と「ガチ恋距離」のPICO
視野の広さはPICO 4特有とも言えるメリットです。軽さや着け心地も重要ですが、個人的に特に推したい点でもあります。
縦方向の視野が広いPICO
縦方向の視野というのは垂直視野角の事です。PICO 4及びPICO 4 Ultraは水平・垂直共に105度の視野角を有します。水平視野角の広いHMDは多くありますが、垂直視野角の広いメジャーな製品は殆ど存在しません。例えば、現在最も人気のQuest 3は水平視野角108度、垂直視野角98度あります。Valve Indexの場合は水平視野角が最大130度と言われていますが、実測値では水平108度で垂直109度ぐらいとなるそうです。(ちなみにIndexはIPDに応じてパネルが最大で5度回転する)
実際にVRChatのテストワールドがあるので確認をしてみました。中心をぼんやりと眺めながら、赤いラインが見え隠れするラインを攻める感じですね。眼鏡や専用レンズなどは使用せず裸眼で着用し、IPDは64mmに設定しています。
純正のフェイスパッドを取り付けて裸眼でPICO 4を被って計測してみたところ、赤いラインの気配が分かるというギリギリの最大値は水平垂直共に106度となりました。2度刻みで調節しか出来なかったので公称値を1度超えてるのは誤差みたいなものでしょう。確実にラインが見えるきつめの評価をする場合は水平垂直102度ぐらいかなといったところでしょうか。もちろん装着具合や瞳孔間距離(IPD)そして眼鏡の有無などで変わってきますが、特に垂直視野角の広さはPICOの利点です。
ワールド内に設置されている表では参考値が104度ぐらいだそうです。仮にIndexから乗り換えるという場合は、PICO 4は狭さを感じにくいのではないかと思われます。
ちなみに、片目2592px設定で視力検査的なものを試した結果は、14番が確実に読めて15番が目を細めれば見えなくもないという感じになりました。
正確な測定かどうかはさておき、こちらはVRChatをプレイしているのなら気軽に試せます。
内側の視野も広く、ガチ恋距離に最適(?)
いきなり何を言い出すんだお前はと思われたかもしれません。自分でも正直なんとも言えない感じはしています。「ガチ恋距離」とは、「本気で恋してしまうほど近い距離」の事であり、思わずドキッとしてしまうほどの至近距離で顔を近づけている状況だそうです。(自分の認識が間違っていなければ多分そう言うことなんだと思う……。)
さて、やたら距離感の近いフレンドがいたりいなかったりするVRChatですが、至近距離まで顔を近づけたときに立体感がありちゃんと綺麗に見えるかどうかは(人によっては)かなり重要であることでしょう。HMDには「片目でしか見えていない部分」があり、その度合いによっては近くのものを見たときに立体感を損なってしまう可能性があります。イメージとしては双眼鏡を覗き込むような感じでしょうか。それに対してPICO 4は他のHMDと比べても両目で重なる部分が広く、違和感の少ない状態で見ることが可能です。双眼鏡ではなく、もっと大きな筒を両目で覗き込む感じと言ったら良いでしょうか。(難しいね)
外側の水平視野角を優先する製品が多い中、何故かPICO 4は外と内を52度ずつ均等に振り分けており、両目で見えている範囲が52度という内側も見やすい特殊なHMDになっています。Quest 3の場合は片目94度の水平視野角のうち外側に54度、内側に40度という振り分けをして、両目で見えている範囲は40度という設計になっているようです。
大雑把な計測ですが、レンズも広々としてる気がしますね。
記事にするにあたって色々と調べましたが、視野角の話は間違ったことを書いているかもしれません。しかし、個人的にとても気に入っている部分なので書きました。その辺りをご了承ください。
JINSで専用レンズが買える
「眼鏡や度付きレンズとか必要だしな~」って方でも大丈夫です。
PICO 4の純正アタッチメントに対応した専用レンズが、JINSオンラインショップで購入できます。JINS側で専用品を用意してくれるのはとても助かりますし、安心感がありますね。価格は7,700円です。
自分は普段から裸眼なので、使用感はお伝えできません。
PICO 4 Ultraでは輝度と色合いが良くなった
PICO 4 Ultraになったことで、画面の明るさが向上しました。PICO 4 Ultraで半分の明るさにしたときがPICO 4の最大の明るさのように感じます。明るさの上限が上がっただけで、暗さは多分同じぐらい(?)だと思います。また、画面の色合いが良くなったので、見慣れたVRChatのホームワールドを見たときにかなりの違いが感じられました。解像度の違いはありませんが、PICO 4よりもPICO 4 Ultraのが鮮明に見えます。
「ワイヤレス」であることの快適さ
PCとケーブルを繋ぐ必要が無い
PICO 4やQuest 3のような単体で動作するHMDはバッテリーを内蔵しており、PCVRを行う際はWi-Fiで映像をストリーミングする方式が一般的です。バッテリーが続く限りという制限はありますが、完全ワイヤレスで楽しむことが可能です。
Wi-Fi 7にも対応しているので、Wi-Fiルーターを適切な設定にして接続すれば高速低遅延でワイヤレスストリーミングも行えます。(手元に試せる環境がない……。)
GeForce RTX4000シリーズやRadeon RX7000シリーズ以上であれば、PICO 4 UltraでAV1コーデックを使ったストリーミングも可能です。
ケーブルを繋いでもUSB1本だけ
充電しながらの利用や、ストリーミングの画質を最優先で遊びたいときはUSBケーブルを繋いで使用してみましょう。PICO専用の接続アプリであるPICO Connectでは、有線接続時も特別な設定を必要とすることなくストリーミングを開始できます。AVC(H.264)コーデックでは最大1000Mbpsの設定で接続できます。(※ビットレートを上げすぎると不安定になる可能性あり)
尚、USBでストリーミングしつつ充電する場合は、補助用の電源を接続できる特殊なケーブルを使う必要があります。自分はZyberGearsのケーブルを使っていましたが、売り切れているようです。類似品だと以下のようなものになります。
ベースステーション不要
コンセントがない、設置場所がない、USBポートの余裕がないなど、様々な理由でベースステーションを設置できないご家庭もあることでしょう。PICO 4やQuest 3は現在の主流になりつつある(もうなってる?)インサイドアウト方式のトラッキングシステムを採用していますので、Wi-Fiの届く限りは好きな場所で利用できます。くれぐれも周りには十分注意して使用しましょう。
無料のPCVR専用アプリあり、コントローラーの調整も可能
PICO ConnectというPCと接続してストリーミングが行えるアプリケーションが提供されています。以下でガッツリとレビューしていますが、Streaming Assistantという名称だった頃と比べると非常に安定して動作しています。コントローラーの位置調整などもできます。
VRChatで使用する際はジェスチャーがおかしくなる不具合があるので、VRChatのSteamVRバインド設定を開いてOculus Touchコントローラー互換のバインドになっていることを確認のうえ、スケルトンの割り当てOFFにすると正常に動作するようになります。(※今後のPICO Connect更新でハンドトラッキング対応した際は元に戻す必要があると思われます。)
「トラッカーはたった2個」でOK!普段使いに最適
とにかく楽ができる
「フルトラしたいけれども、いくつもトラッカーを取り付けるのは面倒……。」「邪魔になるし電池持ちが気になる。」「VRChatでフレンドと雑談を楽しむときはもっと楽をしたい!」そんな願いを叶えてくれるのがPICO Motion Trackerです。こちらはPICO 4やPICO 4 Ultraで使えるトラッカーで、2個セット11,800円です。たった2個足首に取り付けるだけにもかかわらず、PICO 4本体のトラッキングカメラによる追跡と位置推定を組み合わせることで全身のトラッキングを実現しています。
PCVRで利用する際はPICO Connectで繋ぐだけです。VRChatでフルトラするには足に加えて腰を加えた最低3点(全身合わせて6点トラッキング)が必要ですが、足首以外は仮想トラッカーがSteamVRに送られますので腰トラッカーを用意しなくてもOK!物理トラッカー2点だけでフルトラというなかなか真似できるものではありません。専用品ならではの仕組みであると感じられました。もちろん精度向上を目的として更に1セット追加購入して腰にも取り付けることが可能です。足首に2個取り付けるだけでも楽なのですが、キャリブレーションも足元を見るだけの簡単セットアップなので、他のIMU方式トラッカーと比べてもあっという間に準備完了となります。
装着からVRChatへのログインまで2~3分で行えるはずです。
バッテリー駆動時間は約25時間。精度に関しては12個の赤外線センサーによる追跡と9軸IMUセンサーの組み合わせという、いいとこ取りな仕組みになっています。公称値では遅延が約20ミリ秒、位置偏差が平均5cm、角度偏差が平均6度以下との事です。VIVEトラッカーには敵わないのは分かりきっていますが、十分な精度がありました。
初日の使用感については、雑に書き殴った記事があるので以下に置いておきます。今のところ座っていると足が埋まってしまいやすくて変なのですが、ドリフトして身体が捻れることはありません。IMU方式のトラッカーだと足が大きくズレることがありますが、PICO Motion Trackerは頻繁に立ったり座ったりしても軸がずれていないのが嬉しいです。今後のアップデートに期待しています。
VRChatでフルトラしてる人を見た初心者の方が、「自分も同じようなことをしたい!」となってVRデビューと同時にフルトラになる用途では「PICO 4 Ultra + PICO Motion Tracker」の組み合わせはバッチリです。というか、本当にそういう方がいらっしゃいました。(まさか会うとは思ってなかった)
PICO 4 Ultraとセットで買った場合の合計価格は101,600円となります。
トラッカー届きました。
概ね前評判通りです。キャリブレーション時に服の裾などで少しでもトラッカーが隠れていると動作しないので、まくっておくなどの対策は必要です。キャリブレーション後は多少隠れてもあらぬ方向へ吹き飛んでいくことはなさそうでした。
HaritoraXワイヤレスと見た目を比較。
IMU方式の他のトラッカーと比較して安定しているので、知らないうちにドリフトして足腰がねじ切れる事もなさそうです。個人的に嬉しかったのは、金属を含む椅子に座ったり、足を投げ出して床に座っても真っ直ぐ前を向いてくれたことで、満足しています。足首だけの2点でフルトラを実現していることを考えるとなかなか良いです。
かなり甘く評価したとしても、発売時点のままではダメだと思う部分はあります。個人的に大きな欠点だと感じているのは「座ると足だけが床に埋まりやすい事」でしょうか。標準の2点のみを使用した際の話ですが、トラッカーが床を考慮しない動作をするので、座ったまま立ち姿勢へと補正が掛かって足が埋まってしまう事がよくあります。発生頻度については、座るときの動きや姿勢の違いによっても安定感が異なるように感じます。PICO 4 UltraとPICO Motion TrackerでVRデビューと初フルトラを同時に達成してる方と会いましたが、足を動かさずにじっと座っている分には問題なさそうにも見えました。
座ったり寝たりするのはまだまだですが、改善できそうな雰囲気は十分にあるので今後に期待しています。もちろんフィードバックは飛ばしておきました。既にお使いの方は積極的にフィードバックしましょう。
精度が必要なときは他のトラッカーを使おう
HTC VIVEやValve IndexといったLighthouse方式のHMDを使用している場合、既にVIVEトラッカーなどを所持しているかもしれません。そちらの方が精度の高さがダントツなのは言うまでもありませんね。
もちろんQuestやPICOのようなインサイドアウト方式のHMDを使用する場合でも、VIVEトラッカーを組み合わせることは可能です。但し、セットアップに追加の手間が掛かったり、精度向上とセットアップ簡略化のために頭にもVIVEトラッカーを取り付けたりする必要があるかもしれません。場合によってはトラッカー用のドングル(3,980円ぐらい)を別途購入する人もいます。(もし、頭用にVIVEトラッカー3.0を追加購入する場合は19,000円掛かります。)
PICO Motion Trackerは、スケルトントラッキングポイントの設定からSteamVRへ送る身体の部位を選択できます。そのためPICO Motion Trackerを他のトラッカーと組み合わせることも可能です。普段はPICO Motion Trackerだけを使い、必要に応じてVIVEトラッカーを使うと楽ができるのではないでしょうか。
【余談】PICOのトラッカーがヒットしない限り、Metaはトラッカーを作る気がない?
MetaのCTO曰く、「PICOのトラッカーは面白いしこのような選択肢があることはとても素晴らしいけど、需要はそんなにないしこれを主流にするのもどうかな思う。もしPICOが成功して私が間違っていることを証明してくれるなら、我々もそうしないといけないだろう。(意訳)」とのことだそうです。
これまでMetaは頭と手の3点だけで全身推定する方向でずっとやってきていますし、方針が違うんだろうなとは感じました。でも、PICO Motion Trackerが大成功したらQuest用のトラッカーを作ってくれるかもしれませんね。
Metaのストアで「bHaptics TactSuit X16」とかいうものを取り扱っているぐらいなので、他社が作りそうな気もしますが……。
「楽」できることを考慮するとそこまで高くはない
PICO 4 Ultra(256GB)の価格は89,800円であり、Quest 3(512GB)の81,400円と比べると少し高く感じます。また、PCVR目的で使う場合は64GBでも足りてしまうのが実状です。PICO 4が5万円で買えた事を思うと、PICO 4 Ultraはコストパフォーマンスの高さという大きなメリットを失ってしまったわけです。48,400円からのQuest 3Sも発表されましたが、Quest 2と同様にフレネルレンズ採用で厚みがあり、視野角も狭めなのであくまでも参考として載せておきます。
価格の比較
さて、フルトラを目的とする場合も考えてみましょう。IMU方式のトラッカーは幾つかありますので、ここではHaritoraXワイヤレスを購入する場合を考えてみます。HaritoraXワイヤレスは39,999円で、安定性重視で専用のGX6ドングルを追加購入した場合は4,980円追加で合計44,979円となります。それ以外ですと、VIVEトラッカーとベースステーション2点込みのフルセットを新規購入すると108,150円ほど、Ultimateトラッカーの場合は91,900円です。
デバイス名 | 価格 |
---|---|
Quest 3S(128GB) | 48,400円 |
Quest 3(512GB) | 81,400円 |
PICO 4 Ultra(256GB) | 89,800円 |
HaritoraX ワイヤレス + GX6ドングル | 39,999 + 4,980 = 44,979円 |
VIVEトラッカー(3点)+ ベースステーション(2点) | 57,000 + 51,150 = 108,150円 |
VIVEトラッカー(Ultimate) 3+1 セット | 91,900円 |
PICO Motion Tracker | 11,800円 |
完全新規にフルトラする場合 | |
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Quest 3S(128GB)とHaritoraXワイヤレスを買う(GX6ドングル込み) | 97,379円 |
PICO 4 UltraとPICO Motion Trackerを買う | 101,600円 |
Quest 3(512GB)とHaritoraXワイヤレスを買う(GX6ドングル込み) | 126,379円 |
Quest 3(512GB)とUltimateトラッカー3+1セットを買う | 173,300円 |
Quest 3(512GB)とVIVEトラッカーフルセットを買う | 189,550円 |
全て新規に購入する場合でも、フルトラしようとすると10~12万円程度掛かります。ある程度妥協してはQuest 3SとHaritoraXワイヤレスを選べば安価ではありますが、ほぼ10万円となります。このほぼ10万円という価格はPICO 4 UltraとPICO Motion Trackerを買ったときの価格と非常に近いです。
前述したとおりPICO Motion Trackerを使う場合の利点は、出っ張りも少なく軽量であることや約25時間使えるバッテリー駆動時間、そして両足首にそれぞれ1つずつの取り付けで済むというお手軽感にあるます。同じように軽量で長時間利用できるHaritoraXワイヤレスも取り付けは非常に楽ですが、必ず6個全部使用しないと動作しないという仕様が存在します。
PICO 4 UltraとPICO Motion Trackerの組み合わせは、それなりの精度や使用時の手軽さが見込めるうえにトータルの値段が抑えられるという利点があります。また、純正状態で快適なためアクセサリー類を買い揃える必要が薄いことや、現時点では「PICO Motion TrackerはPICO Connectでのみ使用可能」なのでVirtual Desktopの購入は必須ではないという点も考慮すると、より出費が抑えられます。
【備考】Quest 3の128GBモデルは在庫限り
Quest 3の128GBは在庫限りで終売となるそうです。今後は値下げで81,400円となった512GBモデルのみとなります。
そもそもフルトラって必要?
HMDやトラッカーはVRChatで必須の機材ではありませんが、あった方がより楽しめるアイテムです。ちょっとでも羨ましく感じる事があれば、手を出しても良いでしょう。元々、自分はVRでのプレイやフルトラになることはないだろうと考えていた側の人間でした。それでも数人のフレンドと遊んでいると考えが変わってきて、手のひらを返すようになるものです。
もし手を出すとしても、最初から「長時間装着しても疲れにくいHMD」や「装着が簡単なトラッカー」を購入した方が継続しやすくなるので、無駄にはなりにくいと考えています。自分は初代QuestやQuest 2がつらかったのでPICO 4に換えましたし、有線のHaritoraXからHaritoraXワイヤレスに乗り換えています。PICO 4 UltraとPICO Motion Trackerの組み合わせになってからは準備が楽になりましたので、「今日はフルトラでやるぞ!」と意気込まなくても「折角だから着けておこう」ぐらいの感覚でプレイできています。
やたら「頑丈」らしい
コントローラーも頑丈
ぶん投げたりねじったりといった力に耐えられるなど、やたら頑丈なので本体が物理的に損傷する事は少ないはずです。もちろん、コントローラーのジョイスティックが摩耗してドリフトしてしまう可能性はありますが、Questのコントローラーのように短期間でおかしくなる事はないようで、そちらもかなり頑丈なようです。ドリフト自体もスティックへ入力を行って離した際、別方向に一瞬だけ僅かな入力が入るタイプの軽微なものが多いです。
ジョイスティックのモジュールは日本のアルプスアルパイン製だそうです。(見た目はRKJX2シリーズのように見えます)PICO 4 Ultraのコントローラーも同様かは確認できていませんが、丁寧に扱ってあげれば長持ちするはずです。
Androidのオタク向け情報
開発者モードはいつも通り
ビルド番号(ソフトウェアバージョン)連打で入れます。すんなり入れますのでご安心ください。
内部ストレージへのアクセスやAPKのサイドロードも行える
こちらも開発者モードに入る事で容易に行えます。adbコマンドが叩けないと満足できないオタクの皆さんも安心ですね。カメラを使うアプリやオーバーレイで動かすアプリなど、入れても動かないアプリはありますが……。
Androidバージョンは10から14にアップグレード
PICO 4とPICO 4 UltraではPICO OS 5が動作していますが、ベースとなるAndroidバージョンは大きく異なります。PICO 4がAndroid 10なのに対してPICO 4 UltraはAndroid 14となっていました。Pixelシリーズに間もなくAndroid 15が配信されるというタイミングなので、ほぼ最新OSなのは嬉しいですね!マルチタスク動作も良好です。
パフォーマンスグラフも見られる
Questにも同様の機能があると思いますが、開発者オプション内にメトリックHUDがあり、これを有効にするとCPUやGPUの使用率などが見られます。だからなにという感じですが、こういうの見るの好きでしょう?
今後のアップデート予定について
Androidのオタク、デバイスの更新がされるのか気になる問題。Questのように頻繁なアップデートはありませんが、完全にほったらかしということはなさそうです。
PICO 4 Ultra発表時に紹介されていた機能で、現在未提供のものがあります。それらの多くが今年の内にアップデートで対応されるようです。また、PICO 4 Ultraにある機能の幾つかがPICO 4などの旧機種に実装される予定のようです。
あくまでも予定であって確定しているわけではありませんので、変更になる場合があります。
もちろん欠点はある!
自分はあまり問題だと感じませんでしたが、人によっては受け入れ難いものもあります。買って満足できるかは、これらを許容できるかどうか次第だと思います。思いつく限り挙げておきました。
レンズ・画質周りはQuest 3のが上
視野の広さはPICO 4最大のメリットとも言える部分ですが、レンズの品質はQuest 3のが鮮明でより良いものとなっているようです。
自分でQuest 3を試す機会がないので各所で聞きかじった程度の情報しか持ち合わせていませんが、全体的な品質はQuest 3のが良いという声が非常に多いです。見比べないと気が付かないという意見や、明らかに違うという意見もあり人それぞれですが、画質周りはQuest 3の方が肯定的な意見が多いようです。
PICO 4と比べたときの意見が多いので、PICO 4 Ultraと比べた場合は感想が異なる部分はあると思います。PICO 4 Ultraになって画面の明るさと色合いが向上したので明瞭さはPICO 4と段違いでした。
レンズゴーストが目立つ
他にもレンズ内反射で発生するゴースト(レンズグレア?)もPICO 4では目立ちます。この辺りはQuest 3のが抑えられているようです。以下の画像はPICOのホーム画面ですが、下の水色の発光している物体が視界の端に来ると、左側の図のようにふんわりと色が反射して見えます。
手描きなのであくまでもイメージなんですが、暗いところで明るいものを視界に入れると反射が気になる感じはあります。白や青だと目立ちやすいようです。(最初の方で紹介したVRChatの測定ワールドでテストが行えます。)
パンケーキレンズの仕組み上、内部のハーフミラーを通過することで光の利用効率が1/4以下となり、想定した経路を辿れなかった光が目に到達するとグレアやゴーストとなって見えてしまいます。同じくパンケーキレンズを採用しているQuest 3でも、コントラストが高い状況では中央付近のグレアやゴーストが目立つという意見も存在しています。どちらの方が影響が少ないかは同じ状況で比べてみないと分からないのですが、Quest 3のが控えめという情報が多いです。ゴーストが出てしまうのはパンケーキレンズ特有の問題であり完全に避けるのは難しいようです。
また、こちらは不具合ではなく仕様なので、修理して直るものではありません。
Ghosting is a constant challenge for manufacturers of optical devices (mobile phones, cameras, etc.). Ghosting on a screen or lens occurs due to multiple reflections when too much light enters a display device, and is a normal phenomenon in all optical devices.
https://www.picoxr.com/jp/support/faq
レンズに歪みがある
ゴーストについては仕様ですが、個体によってはレンズに明らかな歪みが生じているものがあるようなので、そちらに遭遇してしまった場合は初期不良として問い合わせる必要があります。
頭を動かしたときに文字だけが少し歪む場合は、レンズの構造やコーティング剤の都合で生じているものであり、多くの場合正常です。画像や動画が歪むレベルだと異常です。
Ripples in text-heavy environments when the user shakes their head can not be fully eliminated due to limitations in optics technology and lens coating materials. This does not hinder the VR device’s overall gaming or video viewing experience.
https://www.picoxr.com/jp/support/faq
手持ちのPICO 4も若干の歪みがあるようで、ブラウザで文字を読むときに歪んでいることが分かります。つい最近になってようやく気が付いたので、画像を見たり他人のアバターを見る限りでは全く分かりませんでした。PICO 4 Ultraでレンズ周りは更新されていないとのことですが、今回届いた個体は文字の歪みもほぼ感じられないものでした。もちろん全く歪みが無いわけではありませんが良好です。一応、購入した際は注意深くチェックしましょう。
現時点ではVirtual Desktopで利用できない機能がある
色についても、Virtual Desktopを使った比較ではPICO 4は全体的に淡い色合いに見えてしまいます。これに関してはVirtual Desktop側からPICOの色空間を扱えないなどの理由でそうなるようで、PICO Connectを使う限りは問題ありません。(これに関しては気にならないと言う人は居ます。)
ハンドトラッキングやPICO Motion Trackerの対応がなく、当然ながらQuest専用機能である仮想トラッカーもありません。Questで使うよりもVirtual Desktopの魅力が減ってしまいますが、Virtual Desktopのデスクトップ操作部分などの基本的な部分を気に入っているのなら買っても良いと思います。
ちなみに、Virtual DesktopでハンドトラッキングやPICO Motion Trackerの対応がないのは、PICOの提供しているOpenXRのエクステンションにそれらの対応がないからだそうです。UnityやUnreal Engine用に提供されているSDK 3.0.0では対応しているので、OpenXRの方にも同等のアップデートがあればVirtual Desktopの方で対応してくれる可能性はあります。OpenXR側ではPICO向けのエクステンションIDが15個分予約されているので、そのうち対応されると思われます。(すぐ来るかどうかはPICOの売れ行き次第でしょうかね……。)
Virtual Desktop使用時の動作に不具合がある
PICO 4 Ultraのファームウェアか、Virtual Desktopのどちらかに問題があり、応答が遅くなったり再起動が掛かったりする不具合が発生しています。まだ発売して間もないので、修正には時間が掛かるかもしれません。
Steam Linkは提供されてない
Virtual Desktopはストアにありますが、Steam LinkはPICO向けに提供されていません。PICO ConnectとVirtual Desktop以外の選択肢となるとALVRぐらいでしょうか。
バッテリーのある後頭部ストラップは外せない
重量のあるバッテリーを後頭部に移動したことでバランスが良くなり、着け心地の良いPICOですが、これを取り外すことはできません。純正のバックプレートを外してクッション部分をサードパーティー製品に取り替えることは一応可能ですが、Quest標準のペラペラなバンドのようなものにすることはできませんので、PICOで寝転がるのは難しいかな?と感じています。バッテリー側を頭頂部へフリップアップするだとか、工夫をすれば無理ではないです。
同様の構造をしているQuest ProでV睡している人達からすると問題はないのかもしれませんが……。寝られるかどうかはあくまでも個人的な意見なので、「ストラップを完全に取り外すことはできないよ」とだけ分かればOKです。
バッテリー搭載製品の注意点
PICO公式より、国内で発生したPICO 4のバッテリー発火事故について発表がありました。
なにもPICO 4に限った話ではありませんが、スマートフォンなどと同様にバッテリーを搭載する製品なので取り扱いには注意しなくてはいけません。
今回の場合は、二次流通品(中古販売などが該当、オークションで新品と謳っていたものを購入したとのこと)かつ、充電器を繋いでも反応しない過放電と思われる状態で充電器の接続を数十回繰り返しを行い、加えて長時間の充電をした結果の事故だったようです。(発火時は充電器を外していた状態)
詳しい仕組みについては言及を避けますが、過放電したリチウムイオン電池を充電すると発火する危険性があります。通常こういった製品には保護回路が搭載されていますが、インターネット上にはその保護機構を無視してなんとか充電しようとする方法が掲載されています。昨今の製品は保護回路があるから安全だろうと考えて、動作するまで根気よく充電を繰り返すのは大変危険な行為です。
責めるような書き方をしてしまいましたが、もし自分が同じ立場だったら充電器に繋ぎっぱなしにして様子を見るぐらいは軽率に行ったと思います。
そして、万が一の場合に保証を受ける為にも、正規の販売ルートで新品を購入する事も大切です。(偉そうなことを言っていますが、Quest 2やPICO 4は中古で購入しました。初代QuestやPICO 4 Ultraは新品購入しましたが、中古はリスクがあることを承知の上で購入しましょう。)
イヤホンジャック無し
PICO 4 / PICO 4 Ultraにはイヤホンジャックがありませんので、USBケーブルをPCに繋いでストリーミングをする場合は本体スピーカーをそのまま使うか、Bluetoothイヤホンを使用する必要があります。これはUSBハブを経由するとUSBイヤホンを認識してくれないからです。(少なくともPICO 4ではそうなる)
但し、イヤホンジャックのないスマートフォン向けに売られている、「充電しながら使えるイヤホン変換ケーブル」は使用可能です。この場合は、有線でデータ通信は行えませんので無線でPCVRをする事になります。
有線イヤホンは諦めて外部アンテナ搭載のBluetoothドングルを使い、PCとBluetoothイヤホンを繋いでおいた方が楽でした。
実績があるメーカーのアクセサリーが少ない
PICO 4は装着感が良いので別途アクセサリー類を購入しなくても大丈夫な人は居ると思いますが、より快適に使う為にストラップやコントローラーカバーを購入することはあるでしょう。
しかし、その場合の選択肢はほとんどありません。例えばバックプレートなどを探してみると、複数のレビューがあって品質を信頼できるのはAMVRなどの製品ぐらいです。ここのところPICO向けの新情報が出ていませんが、BOBOVRも信用できると思います。これまでに掲載した写真に写っているPICO 4は、AMVRとBOBOVRのアクセサリーを組み合わせています。
数が少ないので迷う必要がないと考えることもできますが、その分自由度は低いです。充電スタンドのような便利な製品はありませんし、PICO 4 Ultraではコントローラーの形状がPICO 4から変更されたので、それらの専用品はまだ出ていない状況です。フェイスカバー類はPICO 4のものと互換がありましたが、後頭部のバックプレートは互換性がないので当面の間は何も買えるものがなさそうです。
アクセサリーはQuest 3一強と言える状況ですので、PICO 4 Ultra向けに色々と出てくるかどうかは今後の売れ行き次第でしょうか。
バックプレートの互換が無いので、BOBOVRのバッテリードックを気合いで取り付けた結果
Quest 2用のバッテリードックを、ケーブルクリップを両面テープで貼り付けて、AMVRのヘッドストラップに付属しているバンドに括り付けたりするなどをしました。両面テープが外れたときに備えて側面にケーブルを巻いています。見た目は……まぁ。うん。
余談ですが、有線イヤホンは諦めて外部アンテナ搭載のBluetoothドングルを使い、PCとBluetoothイヤホンを繋いでおいた方が楽でした。
保証期間後の有償修理無し、コントローラーの単品販売が無い
PICOは1年間の保証期間終了後は修理を受け付けていないようで、コントローラーの単品販売もしていません。ジョイスティックの交換部品らしきものは流通していますが、分解の難易度は高いと思われるのでお勧めできる手段ではありません。(※Questも保証期間終了後は修理受付不可との話あり、交換品は別途購入可能)
コントローラーは頑丈で致命的なドリフトはしにくい代わりに、ジョイスティックのタッチセンサーが帯電してしまって誤作動しやすいという問題はあります。PICO 4 Ultraのコントローラーで改善しているかどうかは分かりませんが、この問題に遭遇したときはSteamVRのバインドで無効にする対処が必要になる事は覚えておくと良いです。(コントローラーの電源を入れ直すか電池を入れ直す事でも一時的に解決できます。)
具体的にはVRChatでピースサインが出っぱなしになるというやつです。
壊れにくいが、補償期間終了後に壊れたときは絶望的なのがPICOなのです。Questのようにコントローラーの単品販売をどうかお願いします。(切実)
コントローラーが重い
PICO 4のコントローラーは片手につき単三乾電池2本を使用します。サードパーティー製品の落下防止ストラップを取り付けた状態では188gにまで達します。(※アルカリ乾電池ではなくリチウムバッテリー使用時)これは似たようなストラップを取り付けたQuest 2のコントローラーと同じ重さでした。
(あれ、そんなに重くない気がしてきたな……。)
PICO 4 Ultraのコントローラーは大きなリングがなくなって164g(ケース類なし電池あり)と若干軽くなりましたが、Quest 3のコントローラーが130gぐらいらしいので重ためです。
ちなみに1.2Vのニッケル水素充電池を使用するとタッチセンサーなどが不安定になるらしいので、素直にメーカー推奨の1.5Vのアルカリ乾電池を使用するか、非推奨ですが動作はする1.5Vのリチウムイオン電池などを使用することになります。リチウムイオン電池を使用した場合は、電圧が一定となる都合で電池残量が分からなくなりますので、頃合いを見計らって充電する必要があります。大体1ヶ月ぐらいかな?
スピーカーにQuest程の迫力はない
しっかりと聴き比べたわけではないのですが、Quest 2比でもちょっとインパクトに欠ける感じがありました。Quest 3はもっと良くなったと聞いていますので、PICO 4では有線イヤホンが使いにくいのも相まって、どうにも見劣りしてしまう部分です。音が悪いとは感じていませんが、比べてしまうと惜しい部分かなと思います。
ただこれに関しては「話し声が他人に聞かれにくいのが良いんですよ!」って意見もありました。確かに距離を取ると聞こえにくくなりますね。
バッテリー駆動時間は短い
手持ちのPICO 4は恐らくバッテリーがへたっていて正しく評価が行えませんので、PICO 4 Ultraで軽く計測してみました。PCVRでの利用を想定して、PICO Connect 超高画質(2592px)HEVC 150Mbpsで接続して数分ほど動かしてみます。PICO 4 Ultraのディスプレイの明るさは最大にして、PICO Motion Trackerを接続した状態です。
その結果、PCVR用途で最もバッテリーを消費しそうな設定では、25分で30%消費しました。10分あたりでは12~13%ぐらいですので、1時間で約80%消費します。バッテリーセーバー機能を用いると90Hzから72Hzになり、レンダリングされる領域が若干狭くなりますが、PICO Connectの使用かつ短時間の計測では有意差は見られませんでした。バッテリー消費の大部分がディスプレイのバックライトによるものであると推測し、ディスプレイの明るさを0~25%で試してみると10分あたり7~8%程度の消費に下がりました。
以上のことから、ワイヤレスで長時間遊ぼうと思うとモバイルバッテリーなどの外部バッテリーの接続は必須です。画面の明るさを下げればPICO単体で2時間程度の動作が見込めますが、最短では1時間程で電池切れになります。(PICO 4 5,300mAh/PICO 4 Ultra 5,700mAh)
手元のPICO 4ではBOBOVRの拡張バッテリー(B2バッテリー 5200mAh 5V/2.6A)3個をローテーションしながら使用しています。拡張バッテリー1個につき1時間30分ぐらいはバッテリー残量をそのまま維持できる感じで、PICO 4 Ultraでも大丈夫そうでした。但し、画面が明るかったりすると充電が間に合わなくて本体のバッテリーが少しずつ減っていくようです。
PICO 4 Ultraでモバイルバッテリーを使う場合は、USB PD対応(45W以上)のものを使えば大丈夫だと思います。
ハンドトラッキングなどは今ひとつ(※少なくともPICO 4の方は)
PICO 4でのハンドトラッキングの使い勝手は今ひとつです。つい最近ハンドトラッキング改善のアップデートがありましたが、誤作動しやすくてまだまだ反応や機能面はQuestに劣る状態だと感じられました。PICO Connectを介したPCVRでのハンドトラッキング利用も予定されているようですが、現時点(バージョン10.2.7)では公開されていません。ALVRの最新版(v20.11.0)でVRChatのハンドトラッキングが正常に動作するのは確認できましたが、トラッキング範囲が狭く常用は難しそうに感じます。
PICO 4とPICO 4 Ultraでは搭載するSoCが異なり、Quest 3と同様にコントローラーのリングが不要なっています。Quest 3に関してはSoCの性能が向上したことでリング無しでも高精度な追跡が可能になったという話がありました。PICO 4 UltraもQuest 3と同じSoC(Snapdragon XR2 Gen2)を使用していてトラッキング性能に差があると考えられることから、ハンドトラッキングも使いやすくなっている可能性はあります。実際にPICO 4 Ultraでは気持ち誤作動も少なくて使いやすいような気はします。
Questシリーズと比べるとOSの作り込み具合に大差がありますが、PCVR目的であればとりあえず問題にはならない部分です。OSに関してはベースとなるAndroidのバージョンも上がっており、PICO 4とPICO 4 Ultraではできることが大きく異なるので、この部分の評価は変わるかもしれません。
過去の話や誤解されやすい部分など
マイクが悪い?
確かにPICO Connectで音量を100にすると割れますが、PICO Connect初期設定の音量50のままであれば問題はありません。自分が使用した限りでは75ぐらいまではOKでしたが、音質は低下します。PICO 4 UltraやPICO 4を所有する何人かと試した結果、PICO Connect側を50にしてVRChat側を100にするのが丁度良いようでした。「ノイズの抑制」はオフ、「マイクが有効になる音量」は2~5%辺りです。
Virtual Desktopを使用した場合でも音が割れるようなことはなかったので大丈夫です。
公式のストリーミングアシスタントは出来が悪いって聞いたけど?
初期の頃の評判が未だに尾を引いているようです。かつてStreaming Assistantと呼ばれていたPICO公式のPCストリーミングアプリは、現在PICO Connectとなっており品質も大きく改善しています。VRChat目的であればコントローラーのバインドを1ヶ所変更する必要がありますが、問題なくプレイできます。PICOのディスプレイに合わせた色合いで楽しみたい場合も、PICO Connectを使うのがベストだと考えています。
もちろん、VRChat以外の用途では互換性の問題が生じるゲームもあると聞いていますし、好みが分かれる部分もあると思います。現時点ではVirtual Desktopで全ての機能を置き換えることはできませんが、PICOでVirtual Desktopを購入して使うことは可能です。
Virtual Desktopの使用感も好きですが、個人的にはPICO Connectのが好みに合っていたのでそちらでVRChatをプレイしています。もしトラブルが起きたときにVRChatの問題なのか、それとも接続アプリやネットワークの問題かを切り分けるためにも両方使えるようにしておいてもいいですね。何を使うにしてもトラブルが決して起こらないとは言い切れませんから、トラブルに遭ったときに慌てず冷静に対処することが大切です。
アプリが異様に少ない?
PICO 4 Ultraのページに書いてある公式情報では、2024年8月19日時点でVRアプリが650個、MRアプリが40個あります。もちろんMeta Quest対応のアプリと比べると文字通り桁違いの差がありますが、やたらと数が少なかったのは昔の話です。一応サイドロードは容易に行えますし、最初からPCVR目的で買う方はあまり気にしてないとは思いますが……。まぁ、日本向けの新作や名前を聞いたことあるようなアプリがとても少ないと言われればそうですね。ガンダムとか進撃の巨人とか、ああいうのは取り扱っていません。
コントローラーにタッチセンサーが無い?
タッチセンサーあります!
PICO 4のコントローラーにはQuestのTouchコントローラーと同等の機能があります。前述したとおり、ジョイスティックのタッチセンサーが誤作動して困ってる人が居るぐらいです。(SteamVR側のバインドで無効にできます!)
PICO Neo3 Linkの頃には使えなかったようですが、PICO 4となった現在はタッチセンサーもトリガー、ABXYボタン、ジョイスティックにちゃんと存在します。親指レストゾーンのセンサーも反応していることは確認できましたが、利用できるかどうかはアプリケーション次第かもしれません。
VRChatで利用する際もQuestコントローラーと同じバインドになっています。スティックを押し込みながら移動しないといけないなんてこともございません。ピースサインが出せないという話が出ていますが、最近行われたVRChatの入力方式変更(SteamVR Input 2.0対応)による一時的な問題です。こちらもバインド設定を変更することで本来の動きに直せますのでご安心ください。
ヘッドストラップの取り外しができないので、なんだか壊れやすそうに見える
自分もPICO 4を初めて見たときはその辺りを懸念していました。乱暴に扱った耐久試験動画にあるとおり、非常に頑丈なので杞憂に終わりました。今は安心して使っています。
PICO 4でもAV1コーデックが使える?
いいえ、AV1はPICO 4 Ultraからの対応です。AV1設定のままPICO 4を繋ぐとPICO 4 Ultraしか対応しないというエラーが出てAVCに切り替わります。
PICO Motion TrackerはPICO以外でも使える?
悪いなのび太、このトラッカーはPICO専用なんだ。
もれなくPICO Motion Trackerが付いてくるって聞いたけど?
認定販売店であるAmazon・ヨドバシカメラ・ビックカメラで予約した場合に、先着750名まで無料でプレゼント(Amazonの場合は後日無料クーポン発行)というやつなので、予約開始直後にあっという間になくなりました。
PICO 4 Ultraが向いてる人・向いてない人
あくまでも個人的な意見ですが、豊富なラインナップのアプリなど、Metaが用意したエコシステムに乗っかりたい人はQuest 3を購入するのが良いと考えています。日本からリリースされるアニメ・漫画を扱ったゲームはQuest向けにしかリリースされませんし、PC不要でやれることが多いのは間違いなくQuestです。
反面、PCと接続してVRChatしかしないような方であれば、PICO 4 Ultraでは手軽にフルトラ出来ることに加えて、重量バランスが良くて軽い装着感や上下の視野の広さなどの恩恵が得られます。
PICO 4 「Ultra」であって「PICO 5」ではない
これまでPICO 4はQuest 2以上Quest 3未満の存在で、5万円という価格的にも美味しいポジションにありました。後継機となるはずだったPICO 5の開発はキャンセルされ、PICO 4 Ultraが登場することとなりましたが、あくまでもナンバリングは「PICO 4」です。良くも悪くもそのままの部分が多く、マイナーチェンジのような形で留まっています。中身はQuest 3相当の処理性能となりましたが、大きな強みだった価格もQuest 3を超えてしまい、PICO 4 Ultra単体では決定打に欠けるような感じがします。(※今回はPCVR、特にVRChat用途という視点で評価をしていますので、MRや空間ビデオ撮影などの新機能、そして650個あるVRアプリと40個のMRアプリについてはあまり触れていません。)
そんなPICO 4 Ultraが味方につけた秘密兵器がPICO Motion Trackerです。たった2つだけの装着と低価格で全身トラッキングを実現しており、現時点においてこれは唯一無二だと言えます。他のトラッカーは外部センサーを設置する場所の問題や、接続・設定時に起きた問題のトラブルシューティングの複雑さがあり、導入するには敷居が高めです。(※人によります)その点、PICO Motion Trackerは簡単かつお手頃です。VRChat内で座ってお喋りするだけでダンスなどをしないのであっても、没入感を高めるために足のトラッキングを行いたい、あるいは動かせるのが羨ましいという人は少なくないと思います。この頼れる相棒(PICO Motion Tracker)が一緒に居てくれるお陰で、PICO 4 Ultraにも注目が集まっているように感じます。
そして、競合製品を作れる立場にあるMetaが、「PICOが成功しなければQuest用のトラッカーを作る考えはない」と言っている状況なので、PICOは今がチャンスです。PICO単体で動作するリズムゲームやサッカーゲームの他にVRChat(SteamVRも含む)にも力を入れている様子で、国内の体験会でもトラッカー推しのように見受けられます。特に国内でのVRChatは新規ユーザーが急増しているタイミングということもあり、これからVR機器を買う予定の方も居るはずです。Quest 3は大変素晴らしいのですが、PICO 4 Ultraという選択肢にも目を向けてほしいなと思います。
そうそう、Amazonの商品タイトルに「VR Chat」って入っていることに気が付きましたか?
まだ発売前ですし、自分で動作を確認するまでは強くオススメできませんが……いや、個人的に強くオススメしたい。オススメさせて。「ぶっちゃけると運良く未使用品のPICO 4を入手できたら爆安でフルトラ環境ができてラッキーだけど、保証はないと思うからできれば新品のPICO 4 Ultraの方をよろしくね!大成功したらQuestも専用トラッカーを出してくれるよ、多分。」
PICO 4の強化版ということで、今回は「Ultra」になっても大きくは変わらない部分を中心にお話をさせていただきました。2万字を超える長文にお付き合いいただき、ありがとうございます。
PICO 4 Ultra発売日を迎えて無事入手しました、大きなトラブルが発覚して手のひらを返す事のないよう願っています。
2024/09/18:BOBOVRのバッテリーを使用した際の延長時間は2時間ではなく1時間半だったので訂正、アクセサリーの互換性情報についても追記
2024/09/19:勘違いしやすい情報について追記
2024/09/20:発売日ですがAmazonで予約したので届かなさそうだなと思いながら細かなところを修正
2024/09/21:PICO 4 UltraとPICO Motion Trackerが届いたので、取り急ぎ分かったことだけ追記
2024/09/22:1日使ったので少しだけ追記
2024/09/23:PICO Motion Trackerの感想とかアップデート予定とか色々追記と修正
2024/09/25:バッテリーやマイクについて追記
2024/09/26:価格周りを書き直し、スティックの情報を更新
2024/09/28:シースルーモードの比較画像を添付
2024/09/29:バッテリー消費について追記
2024/10/10:アプリの話や向いていない人について追記