当面の間はVRAM搭載量16GBを超えるようなグラフィックボードは出なさそう(だし買えなさそう)だなと思い、Radeon RX 7900 XT(20GB)をVRChat用途で購入しました。
この間買ったRX 7900 GREと合わせたら余裕でRX 7900 XTXが買えるだろって?うん、そうだね……。まぁ消費電力が高過ぎてもちょっと困るので……。
SAPPHIRE PULSE AMD Radeon RX 7900 XT GAMING OC 20GB
今回購入したのはRadeon専売のメーカーであるSAPPHIREから発売されているモデルです。
厚さは2.5スロットぐらい。
光らないやつです。補助電源は8Pinが2つ。
サポートステイが付属しているのは嬉しいですね。
で、取り付け時にやらかした点がありまして……。
このPCケースはスロットカバーに蓋を被せるタイプなんですが、ケースとグラフィックボードの間に隙間がなくて……。
カバーが入りませんでした!(ガハハ)
先にカバーを入れてからグラフィックボードを取り付けるべきでした。以前も同じ失敗をしてるので予測可能だったはずなんですが、これは見なかったことにします。そもそもサポートステイ分の厚みで取り付けられないかもしれませんし、グラフィックボード差し直すのはめんどいので……!
アイドル消費電力は控えめ
WQHD 60HzのディスプレイとWQHD 180Hzのディスプレイを繋いでいますが、アイドル時は12Wぐらいまで下がります。AMD Software: Adrenaline Editionから確認するとVRAMクロックが上がってしまって高めの消費電力が表示されるので、GPU-ZやHWMonitorなどから確認しましょう。ブラウザで動画を観ている程度であれば42Wちょっとで済みます。システム全体では110Wぐらいです。
VRChatをプレイ(RX 7900 GREと比較)
RX 7900 XTの購入理由がVRChat目的なので、VRChatをプレイしましょう。
2020年頃とは大きく異なり、VRChatはRadeonで問題なくプレイできるようになっています。比較的入手しやすいQuestやPICOのようなヘッドセットを使う場合は大きなトラブルも無く遊べています。シェーダー周りも普通に遊んでいて不具合に遭遇することはなかったので、そこは心配しなくても大丈夫です。SANRIO Virtual Festivalで「SHOWBYROCK!! ましゅまいれっしゅ!! キセキかもしれないレゾナンス」も観てきましたけどバッチリでした。
但し、ダイレクトモードのヘッドセットだと何かしらの問題がある機器があります。例えばValve Indexをお使いの場合は90Hzモードだとスタッターが発生するようですので、最新のドライバーを使うなら120Hzモードで遊ぶことになるのかなと。
さて、VRChatはちゃんと動きますが、パフォーマンスがどの程度あるのかは気になりますよね。単体での評価だと寂しいので直前まで使っていたRX 7900 GREと比べてみます。普段はPICO 4 UltraとPICO Connectを使っていますが、Questの場合はVirtual Desktopを使われる方が多いと思うので今回はそちらを使用します。
計測環境・設定 |
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フレームレート
ちょっとソフトウェア周りが古いですが、RX 7900 GRE使用時と状況を揃えて簡易的な比較を行いました。他人のアバターが関与しない、1人での計測となります。(※2025年2月1日時点での計測なので、現在はワールド側が更新されて同じ比較が行えません)
ワールド名・場所 | RX 7900 GRE | RX 7900 XT |
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VRChat Home | 約68FPS | 約88FPS |
ヌックのある家 – Nook house sample | 約73FPS | 90FPS |
Carnelian Town – Rainy Night | 約30FPS | 約33FPS |
夕焼けの帰り道ーOn my way home in the Sunset | 約38FPS | 約47FPS |
Japan Shrine[winter](リスポーン地点) | 約63FPS | 約80FPS |
Japan Shrine[winter](階段前) | 約53FPS | 約66FPS |
Carnelian Townでのワーストケースを除くと、RX 7900 GREとRX 7900 XTには約1.25倍の差がありました。RX 7900 GREが大体8割程度の性能と言われているので、VRChat上でも概ねそのような結果が出ています。
複数人で遊ぶ場合は
VRChatで10人程度のフレンドと遊ぶ場合、快適さはどのワールドで過ごすかに左右される感じがします。相手が一切最適化をしていない異常な重さのアバターを使うなどしない限りは、数人で遊んでも1人で居るときと比べて極端にフレームレートが下がることはありませんでした。Godlike設定(3120px)だとちょっと過剰かなとも思うので、High設定(2544px)あたりで遊んでいれば大体40~50FPSぐらいで過ごせます。
Tips:アバターは軽くしておこう
たった1人の激重アバターで酷く体験を損なうのがVRChatですので、せめて「AAO: Avatar Optimizer」を入れて、AAO Trace And Optimizeコンポーネントをアバタールートに入れるぐらいはしておきましょう。
たとえVery Poor判定だったとしても、最悪の重さからは脱却できますよ。

「Avatar Museum 11」を1周してみる
「Avatar Museum 11」は非常に多くのアバターが展示してあり、展示セクションごとに読み込みが発生するワールドです。ここはフレームレートよりも、読み込み時の引っ掛かり具合を見るのに丁度良い場所かもしれません。行きは通常の歩行速度で、帰りは3倍速で移動して動きを確認してみました。
物理演算や特殊なギミックなどもないので、静止して眺めている分にはRX 7900 GRE/XT共に90FPSで動作していました。次の展示スペースに向かう際に部屋単位で展示アバターの読み込みが発生するので、一時的に70FPSぐらいまで下がるのも同様です。VRAM周りに性能差はあるのですが、引っ掛かり具合も体感での差はありませんでした。
読み込み時にはCPUのフレームタイムも高くなっているので、Ryzen 7 5800X3Dを使っている限りはより高性能なGPUを使っても変化はないような気がします。
開始時VRAM使用量 | 1周後VRAM使用量 | 開始時RAM使用量 | 1周後RAM使用量 | |
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RX 7900 GRE | 15.6GB | 15.6~15.8GB | 18.9GB | 19.6GB |
RX 7900 XT | 15.4GB | 16.2GB | 18.5GB | 18.2~18.5GB |
一応、違いがあったのはVRAMとRAMの使用量です。これに関しては数値は重要ではないので厳密な測定はしていないのですが、VRAMが16GBの7900GREではVRAMから溢れてしまった分がメインメモリに乗っかってしまう状況になる事が確認できました。VRAMが20GBある7900XTであれば、16GBを少し超えてもメインメモリへの影響は少なく、まだ余裕があります。
とはいえ解像度設定は程々に
Virtual DesktopのGodlike設定のような解像度が高い設定でプレイすると、どうしてもVRAMを多く使ってしまいます。VRAMを使い切ってしまった状態でも動作はしますが、低速なメインメモリにデータが置かれてしまうと鏡を出したりする際に非常に重たくなります。
非常に多くのVRAMを消費することが予測されるVRChatのイベントや集会などに参加するときは、Virtual Desktopなどの解像度設定を落としてアップスケーリングのSnapdragon Game Super Resolution(SGSR)を活用することをおすすめします。(※PICO Connectの場合は超解像度ビデオと書かれた設定が該当します)
Meta QuestやPICOで利用できるSGSRはモバイル向けを想定したものなので、アップスケール処理が高速かつ軽量です。僅かに負荷が掛かりますがバッテリー消費が増えるといった状況は考えにくく、むしろ高解像度のストリーミング映像をデコードするよりも、低解像度の映像をアップスケールする方が負荷が軽くなるはずです。
コーデック別の違い
エンコード負荷
手元の環境ではネットワークの都合で大容量のデータを流すと400Mbps程度で詰まってしまうためH.264+の設定は300Mbpsとしました。(※Virtual Desktop H.264+の最高設定は600Mbps)
また、Radeonには2024年のドライバからHEVC 10-bitのエンコードにバグがあるため、8-bitのHEVCを使用しました。Virtual DesktopのH.264+やAV1 10-bitモードの動作はフリーズなどもなく良好ですが、強いて挙げるならばロード画面中にチラつきが発生するぐらいですね。(※Virtual Desktopでのみ発生し、ワールドに入ると問題はなくなる)
2025/03/07追記:25.3.1でHEVCエンコードの不具合は修正されました!チラつきも起こらなくなっているはずです。
コーデック | エンコード負荷(ワールド側で動画再生もされている状態) |
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H.264+ (300Mbps) | 50%前後 |
HEVC (200Mbps) | 64%前後 |
AV1 10-bit (200Mbps) | 41%前後 |
タスクマネージャーのVideoCodec Engineの欄を見ているだけの簡易的な比較ですが、何故かAV1が最も軽いようでした。H.264+も200Mbpsに揃えるとほぼ変わらないかもしれませんが、同一ビットレートであればAV1の方が画質が良くなるはずですし、10-bitでのエンコードになります。
レイテンシー
コーデック別の遅延も簡単に確認してみました。±2msぐらいの誤差があります。
コーデック | エンコード | デコード |
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H.264+ (300Mbps) | 7ms | 13ms |
HEVC (200Mbps) | 6ms | 16ms |
AV1 10-bit (200Mbps) | 3ms | 9ms |
Virtual DesktopにおいてはAV1 10-bit設定が最速という結果になりました。ネットワーク部分のレイテンシーも僅かに小さくなったため、H.264+やHEVCと比べて10ms以上レイテンシーが小さくなるようです。
他社と比べるとRadeonは映像のエンコードが不得手です。ただ、VR用途では特別遅いわけでもなければ、200~300Mbpsの高ビットレートで画質が著しく悪くなるということもありません。とはいえ、パーティクルや桜が舞っているような景色ではエンコードが潰れやすいこともあるので、そのような場面でRTX 4080あたりと比べると差が開く可能性はあるかもしれません。(※Virtual DesktopやPICO Connect、ALVRといった使用するソフトウェアによってエンコード設定が異なりますので一概には言えません)
ドライバーの更新とVRChatの起動オプション変更で一部環境の不具合解消
AMD Software:Adrenaline Edition 24.12.1(32.0.12033.1030)への更新で、Radeon RX 7000シリーズで発生していたPhoton latency関連の調整が入ったらしく、有線のVRヘッドセットにおいて動作が改善した・悪化したという情報がありました。


有線のVRヘッドセット(VIVE Pro 2など)は所持していないのでそちらの確認はできませんでしたが、ダイレクトモードのドライバーとして動作していると思われるPICO Connectにおいては、最新のAMDドライバーに更新してVRChatの起動オプションを変更したところRadeon RX 7900 XTでイマイチフレームレートが出ない問題が解決しました。
VRChatの起動オプションを変更するには
まず、SteamライブラリにあるVRChatのプロパティを開きます。
一般の起動オプションに「–disable-amd-stutter-workaround」と入れたら完了です。
PICO ConnectとRadeon RX 7900 XTを使用する複数の環境で確認が取れました。但しこれはPICO ConnectとRX 7000シリーズ固有の問題である可能性があり、RX 6000やRX 5000シリーズでの情報はまだ得られていません。また、RX 9000シリーズでは必要ないかもしれません。
これは何❓
これは以前VRChatで発生していたRadeonのスタッター問題に対する「VRChat独自の回避策」ですが、少々品質に問題のあるやり方で実装されているようです。a-testの頃からとてもお世話になりましたし、その当時はパフォーマンスの低下が起きない事が確認されていたので、Radeon環境では現在に至るまで既定で有効です。
2024年10月頃の更新で、このオプションを無効にすることが可能になりました。

ただ、この回避策が最近のドライバー更新などで一部環境で上手く機能しなくなったらしく、少なくともPICO Connectの最新版との組み合わせでパフォーマンスの問題が起こるようになりました。(もしかしたらそのひとつ前から起きてるかも?)これは憶測ですが、PICO Connectはモーションスムージング関連のアップデートを予定しているらしいので、PICO側のドライバー周りの挙動が変わったのではないかと考えます。
特別なハックをすることなく正常に動くのであればそれに越したことはないので、PICO 4 UltraとPICO ConnectでVRChatをプレイしている方は回避策の無効化をお試しください。今後のアップデートで修正された際は、オプションを消しておかないとスタッターの原因になると思われます。Virtual Desktopでは元々トラブルは無かったので変化はありませんが、一応覚えておくに越したことはないでしょう。
モンスターハンターワイルズ ベンチマーク
VRChat以外のゲームではどうなのかということで、現在Radeonが注目される理由のひとつになっている「モンスターハンターワイルズ」のベンチマークも行いました。フレームレートはCapFrameXでの計測結果を載せています。レイトレーシングとフレーム生成だけをオン・オフ切り替えをして計測し、FSRは常時オン(クオリティ設定)としています。
計測環境・設定 |
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設定 | スコア | P99 | 平均 | P1 | 1% Low 平均 |
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すべてオフ | 33821 | 141.3FPS | 98.6FPS | 58.3FPS | 48.5FPS |
フレーム生成のみオン | 31166 | 263.9FPS | 181.6FPS | 112.2FPS | 84.2FPS |
RTのみオン | 31124 | 135.4FPS | 90.7FPS | 51.9FPS | 40.4FPS |
RTオン・フレーム生成オン | 28733 | 249.8FPS | 166.6FPS | 98.6FPS | 69.8FPS |
フレーム生成を使用しなくても平均で90FPS程度は出ており、60FPSを下回ることはあまりなさそうという感じです。フレーム生成するとより高フレームレートの状態が維持しやすいです。レイトレーシングを高設定で有効にしてみましたが、あまり影響がなさそうだったので常時オンで遊んでみても良いですね。
VRAMの使用量は最高で19.7GBまで達しました。VRAM搭載量に合わせて贅沢に使い切る設計なのかは分かりませんが、VRAMはあればあるだけガッツリと使い込んでくれるようです。場面が変わったときや、溢れそうになったら使用量が下がるので、大体14~19GBの間を行き来するような感じでした。
モンハンワイルズはCPU・GPU共に全力で動かすとシステム全体で520W近くは消費するので、高設定ぐらいで遊ぶ方が経済的かも……?
余談ですが、オープンベータは不具合などが修正されていない状態ですので、実際のパフォーマンスはオープンベータとベンチマークの間ぐらいを想定しておくと丁度良いのではないかなと考えています。
2025/03/07追記:製品版を45時間ほどプレイしましたが、ドライバーのクラッシュや致命的な描画の乱れはありませんでした。武器の解説動画部分がチラついていたのもモンハンの1回目の不具合修正の際に直ったようです。強いて挙げるならば、Steamのオーバーレイを出したりしたときにモンハン側が1度だけクラッシュしたぐらいです。
入手しにくくなってきた
2025年2月15日時点での価格.comから取得できる在庫状況を見ると、NVIDIAのグラフィックボードは「RTX 4070がギリギリまともな価格で買えるライン」となってしまってほぼ全滅です。VRAM16GBを求めるとAMD Radeonか Intel Arcの2択と言っても差し支えないような状況になっています。
Radeon RX 7900 XTX(24GB)は既にどこも在庫がなく、RX 7900 XT(20GB)も11万円で買えた頃から徐々に値段が上がりつつあります。GeForce RTX 4070(12GB)と競合になるRX 7800 XT(16GB)であれば、まだ8万円ちょっとで購入可能ですが在庫がいつまであるかは分かりませんね。
VRAM16GBで良ければ3月に登場する予定のRX 9070 XT(16GB)やRX 9070(16GB)が控えていますが、価格や入手性がどうなるかが気掛かりです。RX 9070 XTはRX 7900 XTより高い性能かつ省電力となっているようなので、VRAM16GBで十分という場合や、RX 7900 XTぐらいの値段設定であれば……と言いたいところですがそんな贅沢を言ってられないかもしれませんね。
RX 9070シリーズ発売開始!
2025年3月7日にRX 9070とRX 9070 XTが発売となり、価格も発表されました。最安では無印が103,800円、XTが112,979円からだそうです。十分な在庫が確保されているとのこと。大きなトラブルがないことを祈ります。
もしGeForceからRadeonやArcに載せ換えることがあれば、Windowsのメンテナンス(DISM→SFC)とDDUを使ったグラフィックドライバのクリーンインストール、SteamVRなどのクリーンインストールやゲームの設定ファイル等の削除をしっかりやっておかないと、様々なトラブルが起こる可能性がありますのでその辺りは十分注意してくださいね。