2025年4月2日、Virtual Desktop 1.34.0アップデートで待望の「PICO Motion Tracker」に対応しました。
Meta Questで動作するようになったわけではなく、これまでPCVR用途ではPICO Connectでしか動かせなかったPICO Motion TrackerがVirtual Desktopでも動作するようになっただけです。また、ALVR 20.13.0でもPICO Motion Trackerが動作します。
対応するPICO OSのバージョンについては、PICO Motion Trackerが動作する状態であればPICO Neo 3のようにPICO OS 5.9を搭載するデバイスでも動作するらしいとのこと。手元では「PICO 4 Ultra 5.13.3.U」と「PICO 4 5.12.0.S」での動作を確認しました。
前々から準備を行っていたお陰か、非常に早い対応となりました。但し、ハンドトラッキングには対応していません。
Virtual DesktopはPICOストアで2,490円で購入できます。
PC用は公式サイトからインストーラーをダウンロードします。Steamに売っているものは別物なので誤って購入しないようにしてください。
ドライバーバージョンについて
AMD Radeonを使用している方は、ドライバーのアップデートを推奨します。HEVC 10-bitモードのバグが修正されています。(モーションスムージングが有効になっているとメモリリークする問題があるので、内部的に有効になっていないか確認するように!)

但し、Virtual Desktop 1.34.0アップデートでRadeon使用時のHEVCデコードのスパイクを軽減する変更を行ったところ、HEVC 10-bitで不具合が生じるようになったとのことなので、また元の状態に戻すかもしれないそうです。
Virtual Desktopでの動作を確認
基本的な設定は他に詳しいサイトがいくつかあるので割愛します。
Virtual Desktopでの使用時も、PICO Connectと同様にあらかじめPICO Motion Trackerのキャリブレーションを行う必要があります。
Virtual Desktop上での設定は、STREAMINGタブを開いて「Forward tracking data to PC」と「Emulate SteamVR Vive trackers」にチェックを入れます。
ネットワークの帯域を使用することや、サポートするゲームが必要であることを警告されますので、「Yes」を押して有効にしてください。SteamVR内で確認すると片方だけトラッカーがひっくり返っていますが、特に問題はないとのこと。
トラッカーの個別オン・オフはツールで行える
まだ動作を確認していませんが、設定ツールで制御可能だそうです。
SSWを切っておこう
Windows 11 24H2では、Synchronous Spacewarp(SSW)が常時有効だと不具合が生じる問題があります。また、Automaticに設定していてSSWが動作すると、フレームレートが半分になった状態が維持されてしまいますので、SSWをDisabledにしてからSteamVRを再起動しておいてください。
コントローラーはQuestコントローラーとして認識
SteamVRからはQuestコントローラーとして認識されますので、全く別のコントローラーという扱いになります。PICO Connect(PICOコントローラー)で設定してあったバインド設定は適用されませんので、必要に応じて設定をやり直す必要があります。VRChatだけではなくOVR Advanced Settingsなども再設定が必要です。
PICO Connectとの挙動の違いについて
これは単なる推測ですが、ALVRと同様にVirtual Desktopも追加の補正などは行わず、姿勢推定データをそのまま使用しているものと思われます。ALVRでの挙動とよく似ており、あぐらの状態でも膝の高さが固定されることなく自由に変えられます。
雑ですが、ひとまず撮って出しの動画を2つだけ載せておきます。(時間のあるときに撮影をしてちゃんとしたものに差し替える予定)
あぐらについては良い感じですが、足首2個だけを使用した場合は寝転がった状態での動作がイマイチです。PICO 4 Ultraの5.13.3.Uアップデート前の動きと似ており、直立姿勢を横倒しにしたような感じになってしまいました。また、うつ伏せから起き上がるときに上手くトラッキングが行えません。
この点については、腰にも装着して3点で動作させると上手くいくようになるので、今のところはVirtual DesktopでPICO Motion Trackerを使用するときは、腰も増やして3個使うのがベストではないかと思われます。
PICO 4 Ultra 5.13.3.Uアップデート後のPICO Connectでは2点でも横たわったときの動作に問題がなかったことを考えると、PICO Connectは追加の補正が入っている可能性が考えられます。短時間の確認でもVirtual Desktopでの動作は所々で姿勢や挙動の違いが感じられました。PICO ConnectとVirtual Desktopとで、それぞれ得意な状況と苦手な状況が分かれそうです。
自分は全身を使うリズムゲームなどを行わないので遅延の具合は大差ないように感じましたが、トラッキング頻度についてはPICO OS 5.13で向上しているのでPICO OSは最新バージョンへの更新を推奨します。現時点では5.12のPICO 4よりも、5.13にアップデートしてあるPICO 4 Ultraの方がスムーズな動作に見えます。
【追記】補足説明
内容が重複しますが補足説明として、PICO 4 Ultra 5.13.3.UとPICO Motion Tracker(TR0189)3個を使用し、PICO Connect 10.5.10とVirtual Desktop 1.34.0で再度比較を行いました。
立ち姿勢は概ね問題ないだろうと判断し、座った状態を見てみます。
座って足を組む場合、Virtual Desktopの方は想定した姿勢との違いが感じられました。
膝の上に片膝を置く姿勢については、Virtual Desktopの方が思った通りの角度をしていますが少し多めに貫通しています。椅子に座った状態では少し貫通しやすいのが特徴のようです。
また、内股で座るのがやりにくく感じました。激しくズレたときは立ち上がってトラッカーを見続けると戻っていきますが、追加の補正がない分PICO Connectよりもズレが大きくなりやすい印象があります。
一番大きな差があったのはあぐらの姿勢で、Virtual Desktopで使用した方が最も良いという結果になりました。これはALVRでも同様なので、PICO Connect側の追加補正が上手く行っていないのではないかと考えられます。
PICO Connectではあぐらの状態で膝を上げると破綻しています。
ちなみに体操座りなどは大差ありませんでした。
まだ画像の用意ができていないので当面は動画の方で確認して頂けると嬉しいのですが、Virtual Desktop側が不利になりやすい姿勢は横たわり姿勢全般です。あまり自由に動けない点は同様ですが、トラッカー2個でも概ね大丈夫だったPICO Connectと違ってVirtual Desktopではトラッカーを3個使用しないと見栄えが悪い感じがありました。
寝転がった状態での姿勢は、PICO Connect側がなんとか頑張っている印象が強いです。あぐらはなんとかして欲しいところですが、複雑な姿勢については追加補正の有無が物を言わせるようです。
2個や3個での品質差に関してはPICO OS側のアップデート次第なので、今後のアップデートに期待しておきましょう。
上半身の動作について
肘は概ね問題ないように感じられますが、腰と胸の挙動がなんとなく違うように思います。PICO Connectでは腰トラッカーが多少ズレたり傾いたりしていても変な動きにはなりにくいのですが、Virtual Desktopでは姿勢が崩れやすいです。
また、胸の挙動がかなり怪しく、ぐねぐねと揺れ動くような柔らかさが感じられます。人間は軟体動物ではありませんので少々不自然です。PICO Connectでは仮想胸トラッカーが入っている方がより自然な動作となり、上半身の動きはカッチリと安定した動きをしますので、やはり追加補正の有無で差が出てしまいます。Virtual DesktopでPICO Motion Trackerを使うときは胸トラッカーをオフにしてみるか、Standable:FBEのような他の仮想トラッカーに任せてみるなどの工夫が必要そうです。

マイク音量について
PICO Connectと同様に、マイク音量の調整はしっかりと確認しておくことを強く推奨します。
Virtual Desktopでのマイク音量については、マイクブーストが掛からないので100%でも著しく音が割れるという事はありませんが、それでも割れ気味になるのでかなり小さくに設定しておくことをおすすめします。PICO 4 Ultraでは一番下の10~15%まで音量を下げても思いのほかあまり小さくなりません。但し、PICO 4の場合はまた挙動が異なるので30~50%あたりで様子を見るのが良さそうです。
また、ローカルテストで比較を行ったところ、Virtual Desktopの「Noise cancellattion」は喋り始めに違和感があったので、VRChat側の「ノイズの抑制」で代用する方が変に途切れたりポップノイズのような物が混入することなく聞き取りやすいように感じました。
Virtual Desktopのマイク音量を10%にしてあっても、VRChat側のマイク音量も絞って30~50ぐらいまで下げても大丈夫そうに感じました。もちろん声の大きさによってはもう少し上げる必要があると思いますので、複数人のフレンドの方に意見を聞くことをおすすめします。フレンドと話し合いながら設定したのですが、自分はPICO 4 Ultraを使用していてVirtual Desktopを15%、VRChatを50%(ノイズの抑制オン)にしてあります。
VRChatではユーザー別に音量調整が可能なので、フレンドの方に100%から変更していないことを確認してもらいましょう。PICO 4 Ultraの場合、Virtual Desktopの方を10~15%ぐらいのままにして、VRChatの方で音量調整するのがやりやすいと思います。
そんなに小さくして大丈夫なのかと思われるかもしれませんが、VRChat側でコンプレッサーやブーストが掛かる都合上、VRChatのマイク設定にあるメーターが半分を超えるような音量を入力すると他人との距離やワールドの音響ギミックによっては声が割れてしまう事がありました。音質的にも悪くなりやすいので、ある程度は小さめで大丈夫です。声が小さいと言われたら、少し上げてみましょう。
ノイズキャンセリングについて
Virtual Desktopのフォーラムを確認していたところ、「Noise cancellattion」は無音の送信を避けて遅延の削減に使用する目的もあるようでした。マイクが大きく遅延するようになったら試しにオン・オフしてみるのも手ですね。
また、PICO OS側でノイズキャンセリングが常時機能しているようなので、Virtual DesktopのNoise cancellattionを無効にしても完全にオフにはなりませんでした。具体的には2~3秒ほど声を伸ばした際にノイズ判定されて音が減衰する現象が発生します。
ALVRやPICO単体版のVRChatでもノイズキャンセリングが常時有効なので、現時点においてノイズキャンセリングを完全にオフにできるのはPICO Connect 10.5.10とPICO OS 5.13.0以降の組み合わせだけのようです。
その他の挙動や機能について
ディスプレイの色合い調整は無し
PICO Connectでは、PICOのディスプレイに合わせて調整されたプリセットが存在しますが、Virtual Desktopはそのままの映像をストリーミングするので色合いの調整をする方法がありません。
PICO 4 Ultraの場合は少し落ち着いた色合いに感じられると思います。PICO側でスクリーンショットを取ると過剰な見え方に写りますが、VRChatのカメラなどに影響はないのでその辺りは心配無用です。
ここは好みが分かれるところなので、良し悪しは人によると思います。
コントローラーの角度・位置調整なども無し
PICO Connectにあったコントローラーの角度や位置を変更する機能はVirtual Desktopにありません。
CPU負荷について
SteamVRを立ち上げて、ダッシュボードを出した状態で他のアプリの起動が収まるまで待ってから確認をしました。Windowsのタスクマネージャー読みでは全体の負荷に若干の差があるようです。PICO Connectの方はWindows Defenderなどが少し動いてるのが残ってますがまぁ誤差です。1年ぐらい前に確認したときとは異なり、思いのほかPICO Connectの方がCPU負荷が少ない結果となりました。
PICO Connectの方はダイレクトモードのヘッドセットのように振る舞うらしい?ので、PICO Connectの本体とも言える「ps_server」とSteamVR側の「VR Server」に負荷が分かれていました。一方、Virtual Desktopの場合は「VR Server」側に全ての負荷が集約されているように見えます。VR Serverの内訳が分からないので具体的な違いに言及することはできませんが、動作の仕組みが全く異なるのは明らかです。
逆にメモリ使用量についてはUI部分がElection製だと思われるPICO Connectの方がいくらか多くなっており、サーバー部分が分離しているところでもメモリ使用量の差があるようです。
タスクマネージャーで見た限りではPICO Motion Trackerの有無でCPU負荷に有意差は見られませんでしたが、ネットワークトラフィックに影響があるという警告があるので、PICO Motion Tracker使用時に動作に影響が生じる場合は専用ルーターを別途設置するなどしてネットワーク環境の見直しを行うのをおすすめします。
ここが嬉しい、Virtual Desktop
- HEVC 10-bitやAV1 10-bitという選択肢がある(PICO Connectは10bitモードではないと思われる)
- Wi-Fiルーターが強力ならPICO 4 Ultraは無線で最大600Mbps、PICO 4は最大400Mbpsに設定可能(PICO Connectは無線で300Mbps、有線は1000Mbps)
- リフレッシュレートを72Hzと90Hzで自由に切り替え可能(PICO Connectは10.5から項目が削除)
- クロマキー合成によるパススルー機能がある
- SteamVRにヘッドセットのバッテリー残量を送るので、XSOverlayなどでバッテリー切れの通知が可能
設定項目早見表
PICO Connectで使っていた設定が、Virtual Desktopではどこにあるのかの早見表です。ざっと眺めて作ったので正確ではない場合があります。
どちらにも存在する設定
PICO Connect | Virtual Desktop(VR側のメニュー) | ||
---|---|---|---|
デバイス | パフォーマンスパネル | STREAMING | Show performance overlay |
ゲーム | 解像度 | VR Graphics Quality | |
ビットレート | VR Bitrate | ||
フレーム補間 | Synchronous Spacewarp (SSW) | ||
フレームバッファリング | Video buffering | ||
画像のシャープ化 | Sharpening | ||
超高解像度ビデオ | Snapdragon Game Super Resolution | ||
ガンマ | Gamma | ||
音声 | ヘッドセットのマイク | SETTINGS | Microphone passthrough |
ヘッドセットのマイクのノイズ削減 | Noise cancellation(※完全に無効にはならない) | ||
PICO Connect | Virtual Desktop Streamer(PC側のメニュー) | ||
ゲーム | コーデック | OPTIONS | Preferred Codec |
音声 | ストリーミング用に ヘッドセットのマイクに自動切り替え | Auto-select microphone | |
音声出力デバイス | Audio Streaming | ||
一般 | 起動時に開始 | Start with Windows | |
自動接続 | SETTINGS | Auto connect(※アプリは起動する必要あり) | |
PICO Connect(SteamVRの設定内) | Virtual_Desktop_Body_Tracking_Configurator | ||
Motion Tracker | スケルトントラッキング ポイントの設定 | Enabled Trackers |
片方にしか存在しない・あまり同一ではない設定
PICO Connect(SteamVRの設定内) | Virtual Desktop | ||
---|---|---|---|
コントローラー | 設定なし | ||
PICO Connect | Virtual Desktop | ||
ゲーム | 色彩強調 | 設定なし | ※レンジの設定はある |
デスクトップ | テキストの鮮明化 | ||
一般 | 終了時にシステムトレイに最小化 | ※起動時に最小化はある | |
言語 | |||
ラボ | コントローラーの感度 | ||
設定なし | ※PICOのホームスペースの 設定に相当 | ENVIRONMENTS | |
INPUT | |||
SETTINGS | Use optimal resolution | ||
Arrange monitors on recenter | |||
※ホームスペースの パフォーマンス設定に相当 | Environment Quality | ||
※ホームスペースの パフォーマンス設定に相当 | Frame Rate | ||
Desktop Bitrate | |||
※PICOのディスプレイの 明るさ設定に相当 | Screen Brightness | ||
Dynamic Lighting | |||
Allow custom orientation in all environments | |||
Boost clock rates | |||
Copy screenshots to desktop | |||
Remove head lock delay | |||
※PICO Connect 10.5から 設定が消滅 | STREAMING | VR Frame Rate | |
VR Passthrough | |||
Center to play space (Stage tracking) | |||
Track controllers | |||
※色彩強調で 飽和に設定するのに似ている | Increase video nominal range | ||
VIDEOS |
トラブルシューティング
設定に関するちょっとしたトラブルシューティング
デスクトップの操作ができない
INPUTタブ内のInput Optionsにある「Controllers interact with desktop」のチェックが外れていると思うので、チェックを入れます。「Press grip to grab/resize screen」にチェックを入れるとディスプレイを掴んで動かしたり拡大したりできます。
デスクトップの拡大率が変わってしまう
SETTINGSから「Use optimal resolution」のチェックを外すと自動変更されなくなります。
評判の良い有料アプリならではの品質
大人気の定番アプリなので、喜びの声が多数上がっています。QuestとPICOを併用する方にとっても嬉しいニュースです。
Quest版と比較すると様々な都合で利用できない機能はありますが、人気の有料アプリなだけあって品質はとても良いです。個人的にはPICO Connectでの見え方やコントローラー周りの設定・ハンドトラッキングも捨てがたく、どちらを使用するか迷います。PICO Motion Trackerの挙動も異なるので、使い方によってはうまく馴染まない事もあると思います。用途や好みに合わせて使い分けるのが良いでしょう。
PICO Motion Tracker発売時によく言われていた「座っていると立ち姿勢になりやすい」という問題はアップデートで最近のPICO OS 5.13とトラッカーのファームウェアアップデートで解消しているため、PICO ConnectとVirtual Desktopのどちらでも発生しませんでした。PICO 4 Ultraではなく、PICO 4をお使いの方はPICO OS 5.13のアップデートに期待しておきましょう。
同時起動しない限りは競合しないことも確認していますので、様々なトラブルに備えてPICO ConnectとVirtual Desktopの両方をインストールしていつでも使えるようにしておくのも手です。同じようなことをしているように見えて、全く異なる仕組みで動いているアプリなので、環境によってどちらか一方が上手く動かない事も考えられます。何かおかしいときはメンテナンスを行う良い機会と考え、Windowsやグラフィックドライバ、SteamVRの修復やクリーンインストールを試みましょう。

レビューのためにしばらくはVirtual Desktopを使用してVRChatをプレイするつもりです。使用感やその他の設定が可能かどうかといった詳細な情報については、後日追記を予定しています。
2025/04/02夜:CPU負荷や姿勢の違いについて追記
2025/04/03:マイク音量や設定項目、違和感などについて追記
2025/04/16:ノイズキャンセリングやトラブルシューティングについて追記