新しくなったストリーミングアプリ、「PICO Connect」レビュー

「PICO Connect」は「PICO OS 5.9.0」以降で利用できるようになった、PICOデバイス向けの新しいストリーミングアプリです。これは、これまで利用できた「Streaming Assistant」の後継アプリとなります。

※6月18日に配信された10.1.5アップデートでBetaの表記がなくなりました。解像度やビットレート設定も大幅に向上しています。

「PICO Connect」ではPCのデスクトップに接続して操作したり、SteamVRのゲームをストリーミングで楽しんだりすることができます。早い話が、無料で「Virtual Desktop」と同じようなことができるアプリです。

PICO Link Windows ソフトウェア | PICO Japan
オールインワンヘッドセットのストリーミングアシスタントであるPico Linkを使用して、PC VRゲームをお楽しみください。インストールのガイダンスに従ってください。

今回は、「PICO Connect」が「Virtual Desktop」などと比べてどう違うのか、どういった利点があるのかに注目してレビューしていきたいと思います。

良かった点

  • 無料の公式機能なのですぐ試せる
  • PICO 4本来の鮮やかな色合いで楽しめる
  • 片目3480pxまで対応
  • なんとアップデートでヤケクソ気味の「AVC 1000Mbps」設定が追加(※USB接続時のみ)
  • Wi-Fiでも、USB接続でも簡単に利用可能
  • コントローラーのトラッキングも良好
  • コントローラーの角度調整に対応
  • AV1対応(PICO 4 Ultra専用)

悪かった点

  • マルチディスプレイ時、画面の切り替えに時間が掛かる(PICO 4 Ultraでは変更があるかも?)
  • Windowsのソフトウェアキーボードを呼び出せるが、PICO内のキーボードは使えない
  • SteamVR側へHMDとコントローラーのバッテリーを通知してくれない(XSOverlayなどで確認できない)

記事長過ぎ、簡単にまとめて。

PICOヘッドセット専用に作られた、Wi-FiとUSBどちらでも簡単に接続できる無料のPCVRストリーミングアプリ。価格・手軽さ・機能等を考慮すると個人的に甲乙付け難く、Virtual Desktopとは良い勝負。専用トラッカーなどはPICO Connectでしか使えないので注意。

まずはPICO側のアップデートを

「PICO Connect」は「PICO OS 5.9.0」から利用できるアプリなので、まずはPICO本体のアップデートを行う必要があります。特筆のない限りはPICO 4を使っている前提で説明をします。

PICO 4本体のアップデート

設定から「PICO OS 5.9.0以降」へアップデートをします。詳細は割愛しますが、ここで手間取ることはないと思います。

PICO本体側のアプリをアップデート

  • ストアで「PICO Connect」と検索してアップデートをします。
  • スマートフォン側からアプリを検索してインストールすることもできます。

PCにPICO Connectをインストールする

公式サイトからダウンロードして、PCにインストールしましょう。

PICOアカウントへのログインは行わなくても利用できます。

ログインしていない場合、同一ネットワーク内にある他のPICOヘッドセットからPCに接続できてしまいますので、そのような環境ならばログインしておいた方が安全です。

各種設定

(※スクリーンショットは10.0.24 Betaのものが含まれています)

ゲーム

解像度

PICO 4の解像度は片目2160pxですので、高画質(High)設定でほぼ同等になりそうです。超高画質(Super)設定だとそれを上回るようになります。

設定解像度(グラフィックボードの目安)
スムーズ(Smooth)1728px(GTX1070/RX5500XT)
標準画質(Standard)1920px(RTX2070/RX5700XT)
高画質(High)2208px(RTX3070/RX6800XT)
超高画質(Super)2592px(RTX3090/RX6950XT)
ウルトラHD(Ultra)3120px(RTX4090/RX7900XTX)
ウルトラHD+(Ultra+)3480px(RTX4090/RX7900XTX以上)

ビットレート

AVCはワイヤレスの場合に20~300 Mbpsまでの間で設定が可能で、USB接続すると1000 Mbpsまで設定出来るようになりました。えっ……?

HEVCとAV1では20~150 Mbpsまでの間で設定することができます。AVCもHEVCも可変ビットレートなので、150Mbpsに設定したとしても100Mbpsを切ったり、150Mbpsを超えたりする事が多々あります。(※AV1は動作未確認です)

リフレッシュレート

リフレッシュレートを72Hzから90Hzに変更します。PICO本体の設定でも90Hzを有効にする必要があります。

コーデック

AVC(H.264)とHEVC(H.265)そしてAV1を選択できます。ビット深度の設定は見当たらなかったので、恐らく8bitでしょう。

AV1についてはPICO 4 Ultra専用です。(10.2.7で対応)

フレーム補間(ASW)

ネットワーク接続の問題でフレームが欠落した場合に、既存フレームに基づいて補間してくれるとのこと。

ところがよくよく調べてみたところ、これはASW(Asynchronous SpaceWarp)のことでした。

フレームレートが著しく下がったときに補間を行う機能ですので、頭を大きく動かすと視界が歪んだりうねったりします。個人的に「Virtual Desktop」のSSW(Synchronous Spacewarp)も違和感があるのですが、ASWの方が視界を動かしたときの歪み方が顕著でした。UIや文字を凝視する際に結構な歪みを感じられます。30FPSぐらいまでフレームレートが落ちるほど重たい場面では結構厳しいように思えるので、この手の機能をVRChat民はオフにしてることが多そうな印象があります。

デフォルトでオフとなっています。歪みが気にならないなら有用な機能ですが、違和感があるようならオフのままにしておきましょう。

フレームバッファリング

フレームレートが増加しますが、接続が不安定な場合は遅延が発生するとのこと。

フレームレートが増加するというよりも、バッファを溜め込むことでビデオストリーミングのコマ落ち発生が軽減される感じではないかと思われます。デフォルトで有効です。

画像のシャープ化

後述する超解像度ビデオと併用可能だったので、PC側での映像エンコード時のシャープ化だと思われます。デフォルトは75%でした。

超解像度ビデオ

PICO 4のデフォルトのレンダリング解像度(eye buffer)は1504pxとなっているようで、実解像度である片目2160pxよりも小さく設定されています。超解像度機能を使うと、レンダリング解像度を上げる代わりに画像補間による高解像度化を行うとのこと。(※PICO 4 Ultraは1920pxがデフォルトになっています)

Super resolution | PICO Developer

PICO自体は「Snapdragon Game Super Resolution (SGSR)」に対応しているようです。「Virtual Desktop」にもSGSRの設定があるので、こちらの機能を使用しているのかもしれません。

Bringing Snapdragon Game Super Resolution to PICO Devices | PICO Developer

さて、「PICO Connect」の「超解像度ビデオ」についてはなんとも言えないところではあるのですが、「Virtual Desktop」のSGSRと同様なのではないかと思われます。「スムーズ」や「標準」設定のような実解像度よりも低い設定においては有用だと思いますが、SuperやUltra設定だと機能しないあるいは恩恵が小さくなることでしょう。

スイッチのオン・オフをして見比べてみると、エッジの利いた鮮明な感じになっていました。必要以上に設定を上げなくてもくっきりとしたディテールになるので、PC側の負荷を抑えつつ高品質な映像で遊べそうです。

ガンマ

ガンマ補正の設定です。暗すぎたり明るすぎたりして、細部が見づらいと感じたときに少しだけ弄ると良さそうです。「Virtual Desktop」にも同様の設定があります。

デスクトップ

テキストの鮮明化

テキストだけではなくデスクトップ画面全体にシャープニングが掛かるようなので、画像のディテールも変化します。

音声

マイクをオンにする

デフォルトでオンになっています。音量の設定もここで行えます。音量のデフォルトは50です。

PICO 4はデュアルマイクを搭載しており、Windowsからは「2チャンネル 16bit 48000Hz」のマイクとして認識されます。声量によると思いますが、自分の場合はマイク音量50~75ぐらいであれば問題ありませんでした。マイク音量100はバリバリに割れるのでNGです。

音声出力デバイス

音声の出力先を、「ヘッドセット」「PC」「ヘッドセットとPCの両方」から選択することができます。

一般

同一アカウントにログインしているヘッドセットを自動接続する設定があります。有線時のみ、無線時のみといった設定も可能です。デフォルトでWindows起動時に開始する設定になっているので、煩わしい方はここでオフにしておきましょう。

言語設定とバージョン確認もここにあります。

ラボ

コントローラーの感度

コントローラーのトラッキング感度を設定することができます。感度を上げすぎると僅かな動きも反映するようになるので、手ブレが生じてしまいます。50%が初期値です。

基本操作

デスクトップモード
Aボタン・Xボタン・トリガー左クリック
Bボタン右クリック
左・右スティックホイールスクロール
左メニューボタン・Yボタン・終了ボタン(画面右上)PICOのホームに戻る
SteamVRを起動ボタン(画面右上)SteamVRを起動・SteamVRに戻る
数字ボタン(画面左上)表示するディスプレイを切り替える
キーボードボタン(画面右上)Windowsのスクリーンキーボードを起動
SteamVRモード
左メニューボタン2回押しデスクトップモードに戻る
左メニューボタン長押しパフォーマンスパネルを表示・非表示

パフォーマンスなどを比較

動作確認環境

  • Windows 11 Pro 23H2
  • Ryzen 7 5800X3D
  • Radeon RX 7900 GRE / Radeon RX 6800
  • AMD Software: Adrenaline Edition(24.5.1~24.7.1)
  • PICO Connect(10.1.5)
    • ガンマ 1.00
    • 超解像度ビデオ オン
    • 画像のシャープ化 75%(75%が初期設定)
  • Virtual Desktop(1.32.5)
    • Gamma 1.00
    • Increase video nominal range オフ
    • Sharpening 50%
  • ALVR(20.6.1)
  • 無線:Aterm WX1800HP Wi-Fi 6(5GHz)
  • 有線:USB3.0ケーブル(5Gbps)
  • VRChat 高設定(アンチエイリアス4x)

10.1.5アップデート時に検証し直しているので、幾らか設定にばらつきが生じています。また、PICO 4標準のスクリーンショット機能を用いていますので、画像の劣化が生じています。予めご了承ください。

10.1.5アップデートでビットレート上限が大幅に変更されました。HEVCコーデック使用時は150Mbpsのまま変わりませんが、AVCコーデックの場合は300Mbpsを超えてもPICO本体側が簡単には悲鳴を上げないようになっています。それでも負荷は掛かってバッテリー消費が増える可能性があるので程々にしておきましょう。

AVC 300Mbpsと500Mbpsを試す

10.1.5アップデートで、AVCコーデック使用時にUSB接続で最大1000Mbpsを設定可能になりました。また、ワイヤレス接続時の上限も150から300Mbpsに向上しています。

Betaの頃はファイルを改変して無理やり300Mbpsなどに設定する手法がありましたが、PICO側のデコードが間に合わなくなるなどのトラブルが起きるので実用的ではありませんでした。しかし、今回のアップデートからはAVC 300~500Mbpsでのデコードは問題なく行えるようになっています。とはいえ、流石に1000 Mbpsはやり過ぎなようで、USB接続でもマトモに動作しなくなり、映像が止まってしばらく応答が無くなる事もあります。その場合はPICO本体のメニュー画面はすぐ出せるので、一度アプリを終了して開き直すと復帰できます。

ほとんどの場面で綺麗に表示されるため、今回は桜並木やアスファルトの路面がある場所といった、あえてかなりの悪条件で比較をしてみます。こういったものは細かいせいでエンコードが潰れやすいからです。金網とかも表示が潰れやすいです。

解像度設定は高画質(High)2208pxで、超高解像度ビデオ設定を有効にしています。

遠目に見た感じ

ワイヤレス接続の上限値では、AVC 300MbpsとHEVC 150Mbpsが大体同じぐらいか、AVCのが少し上という感覚がありました。どちらもアスファルトのようなディテールが細かなものは潰れてしまいます。

簡易的な確認だけで限界は切り詰めていないのですが、700~800Mbpsぐらいから苦しそうな感じがあるので上げすぎは禁物です。とりあえず半分の500Mbpsかなと試したわけなのですが、十分に綺麗な表示で楽しめます。

分かりやすいようにトリミング

HEVCがイマイチなように見えますが、AVC 300Mbps相当を150Mbpsで実現しているのでネットワーク周りが安定するはずです。余裕があるのならUSB接続でAVC 500Mbps、Wi-FiではAVC 300Mbpsで遊ぶという運用が丁度良いかもしれません。

※公式の案内によると高ビットレート設定はバッテリー寿命の低下の他に、Dockバーの遅延、画面録画のスタッタリング、モーショントラッカーの遅延増加などが生じる可能性があるとのこと。適切な設定を心掛けましょう。

Virtual DesktopとHEVC 150Mbpsで比較

HEVCでのビットレートは「Vitrual Desktop」と同様に150Mbpsが上限です。「PICO Connect」の方はパフォーマンスを監視していると150Mbps以上出ているときもあるようです。

但し、先程のように雨が降っているワールドなどの視界はイマイチで、「PICO Connect」のHEVCコーデックはエンコードが潰れやすい状況下での表示品質は悪いようです。

動きのある場面も苦手なようで、車で桜並木を駆け抜けていくような場面でも表示が潰れてしまいがちです。道路の中央線が潰れて遠くの方が消えているほか、桜もモヤがかかってしまいました。そういうときはビットレートが100~130Mbpsぐらいだったりして、150Mbpsは出ていません。

VRChat内での比較

Radeonにおいては同じHEVC 150Mbps設定の場合、「Virtual Desktop」の方が表示が潰れにくくて良好でした。「Virtual Desktop」は固定ビットレートで動作しているように見えるので、そのあたりの差があるのかもしれません。

また、AVCの場合は「Virtual Desktop」の方が「ワイヤレスでH.264+ 400Mbps」に対応している分だけ優位性があります。(※「PICO Connect」はワイヤレスでAVCは300Mbpsまで)ネットワーク環境によっては400Mbpsは安定しないのですが、300Mbpsあれば良い感じでした。

画質を優先したいけれどもWi-Fiルーターとの接続が安定しないのであれば、「Virtual Desktop」でHEVC 150Mbps(※こちらは10-bitモードも選べます)で遊ぶのが良さそうです。

「PICO Connect」と「Virtual Desktop」共にWi-Fiルーターに余裕があるのなら、HEVC 150MbpsよりもAVC 300Mbpsのがより綺麗です。

解像度は片目3480pxまで設定可能

PICO ConnectVirtual Desktop
Potato 1488px
スムーズ(Smooth)1728pxLow 1776px
標準画質(Standard)1920pxMedium 2064px
高画質(High)2208px
超高画質(Super)2592pxHigh 2544px
Ultra 2736px
ウルトラHD(Ultra)3120pxGodlike 3120px
ウルトラHD+(Ultra+)3480px

(※近そうな解像度で比較)

10.1.5アップデートで設定可能な解像度が引き上げられました。「PICO Connect(Beta)」の頃はUltra設定(2560px)が最高設定でしたが、アップデート後は「Virtual Desktop」のGodlike(3120px)相当の設定やそれを超える設定が追加されました。

ハイエンドグラフィックボードではないRadeon RX 6800なのであくまでもちょっと確認した程度ですが、「ウルトラHD+(Ultra+)設定」の片目3480pxはもの凄くクッキリとしていました。これまでなんとなく遊んでいたのと比べると流石に異次元というか、ここまで綺麗な表示になるんだなと驚きました。

さて、そんなわけで「High」から「Ultra+」までスクリーンショットを撮って並べてみましたが……。

イマイチよく分からないですね。通常のスクリーンショットは1920×1920のJPEGファイルにされてしまうので、adbコマンドで取得してみましょう。

adb shell screencap -p /sdcard/スクリーンショット.png

体感では「旧Ultra設定」相当となる、2592pxの「超高画質(Super)設定」で十分過ぎるぐらいだと思うので、最高設定となる「Ultra+」と比較してみます。

それでもよく分からないので、拡大してみます。

なんとなくですが、「Ultra+設定」の方が細かな部分が潰れずに済んでいるように見えます。スクリーンショットでは上手く伝えられないのが残念です。

※公式の案内によるとウルトラHD(Ultra/Ultra+)設定に関してもバッテリー寿命の低下の他に、Dockバーの遅延、画面録画のスタッタリング、モーショントラッカーの遅延増加などが生じる可能性があるとのこと。適切な設定を心掛けましょう。

旧Ultra設定相当となる「超高画質(Super)設定」の片目2592pxでも十分見やすいですし、可能であればUSB接続でAVC 500Mbpsぐらいにしておくと大変見栄えが良いです。「超高解像度ビデオ」設定を組み合わせてみるのも良いですね。(最高設定はPICO 4側が厳しそうなので、新しく発表されたPICO 4 Ultra向けなのかも……?)

【備考】SteamVR側でレンダリング解像度を上げるのと何が違うの?

PICO Connectの解像度設定を変更すると、SteamVRのスケーリング100%時のサイズも変更されます。では、「PICO Connectの解像度設定は標準画質(1920px)のままSteamVRのレンダリング解像度を3480px相当まで大きくした場合」と「PICO Connectの解像度設定をウルトラHD+(3480px)まで大きくした場合」では、後者の方が綺麗に見えるはずです。

PICO Connectで設定した解像度でエンコードも行うと思われるので、「PICO Connectの解像度設定は標準画質(1920px)のままSteamVRのレンダリング解像度を3480px相当まで大きくした場合」は実際にPICO本体に送られてくる映像は1920pxとなります。逆にSteamVRのレンダリング解像度を1000px相当まで下げていても、PICO Connectの解像度をウルトラHD+にしていると1000pxを3480pxまで引き延ばしただけの映像が送られてくるはずですので、PICO本体に無駄な負担が掛かることになります。

エンコード解像度とレンダリング解像度の関係はVirtual DesktopやALVRでも同様なはずですから、SteamVRのレンダリング解像度を変更する際はアンバランスな設定にしないよう気をつけましょう。

HEVC時の色は8bit?

10bit表示になっているかどうかについては、恐らく8bitのままだと思われます。VRChatのロード画面で見比べてみるとカラーバンディングはあるものの、普段から目立つかどうかについてはそこまで顕著ではないと感じました。

VRChatのロード画面での比較

AMD Radeon RX 6800 / RX 7900 GRE(ドライバ 24.5.1~24.7.1)でもHEVCコーデックは不具合なく快適に動作しています。

シャープや超解像度ビデオで調整するのもアリ

シャープの掛け具合で品質にかなりの差が生じますので、無理してSuperやUltraに設定する必要はなさそうだと感じました。High設定でもシャープや超解像度ビデオ機能を有効にするなどして、負荷を掛けすぎないようにするのも大事だと思います。

負荷について

10.1.5アップデート後、簡単に検証しました。他と比べてPICO Connectの方が明らかに重いという事はなかったので、安心してもらって大丈夫です。

解像度別比較

Radeon RX 6800とSteamVR Homeで確認したときの負荷です。大雑把な比較ですが、VRAM使用量はかなりの差が出ているのでVRChat用途であれば「High」か「Super」ぐらいにしておくのをおすすめします。

解像度GPU使用率VRAM使用量
高画質(High)2208px63~80%5.7GB
超高画質(Super)2592px78~85%6.0GB
ウルトラHD(Ultra)3120px67~89%6.8GB
ウルトラHD+(Ultra+)3480px85~90%7.4GB

フレームレート比較

PICO Connect 10.1.5Virtual Desktop 1.32.5
  • 超高画質(Super)2592px
  • HEVC 150Mbps(無線)
  • 90Hz
  • ASWオフ
  • High 2544px
  • HEVC 150Mbps(無線)
  • 90Hz
  • SSWオフ

KanaRoom入ってすぐ横のミラー前と、Carnelian Town入ってすぐのガイド前で簡易測定をしました。

簡易測定した限りではフレームレートはどちらも大差なく、変動もありません。VRAM使用量についても影響が出るほどの違いはなさそうです。短時間の測定なので、平均フレームレートについては無視してください。GPU/CPUのフレームタイムを見ると「PICO Connect」の方が若干負荷が高いように見えますが、そもそも解像度が違うのでその差は出てしまいそうです。

というわけで、SteamVRの設定を変更して可能な限り解像度を合わせたのが以下。

96%設定にすると片目2540pxになるので、レンダリング解像度は大体同じになります。(エンコード解像度は恐らくそのまま)GPUのフレームレートとフレームタイムもほぼ横並びとなりました。GPU側の条件をできる限り揃えてみましたが、それでも「Virtual Desktop」の方がCPU使用率が僅かに低いという差が見られます。流石にどのような処理の違いがあるのかまでは分かりませんが、数値の差は小さくて体感できるような差はありませんので、許容範囲だと思います。

尚、SteamVRの解像度スライダーを弄るときにうっかり解像度を上げてしまった影響が出ているので、96%設定時のRAMとVRAM使用量、平均フレームレートは参考にしないでください。

表示は色鮮やか

Quest 2などからPICO 4に乗り換えたとき、「Virtual Desktop」の映像があまり鮮やかではないと感じたことかと思います。これは「Virtual Desktop」で使用している機能がPICO側にない都合だとは思いますが、「PICO Connect」や「ALVR」ではちゃんと色合いが鮮やかに表示されます。

細かな設定ができる「ALVR」と違って、そもそもPICO用の「Virtual Desktop」では、Quest版に存在する「Increase color vibrance(色の鮮やかさを高める)」の項目が存在しません。(※Increase video nominal rangeはある)

また、「πランチャー」などからAndroid標準の設定を呼び出して、ディスプレイ表示をビビット設定にしても「Virtual Desktop」ではあまり変化を感じられないと思います。

これは好みの問題ですが、個人的には「PICO Connect」の彩度の方が心地よく感じられました。スマホなどでスクリーンショットを見ると濃すぎるように感じますが、PICO 4のディスプレイではこのぐらいが丁度良く見えます。

マイク音量と遅延について

VRChatでよく遊ぶフレンドに確認してもらいましたが、「Virtual Desktop」と比べてマイク品質の変化は感じられなかったそうです。しっかりと聞き比べると差はあると思われますが、気になるほどではなさそうです。

PICO 4発売当初は「マイクがバリバリと割れるんだけど!」という話を耳にしていました。今更ですがちゃんとチェックしましたところ、初期設定の音量50であれば問題ありません。わざわざ音量を上げて100に設定しなければ大丈夫です。話し声の大きな方は50よりも下げる必要があるかもしれません。PICO Connect側で行った音量設定はWindowsの録音デバイスのレベルと連動していますので、勝手にマイク音量を弄るようなアプリケーションを使っている場合は影響するかもしれないので注意してください。

「Windows標準のサウンドレコーダー」で録音したmp3データは以下の通りです。(※Audacityでくっつけました)

話し声程度の声量で、PICO Connect マイク音量100→75→50の後にVirtual Desktopで100→75を収録してあります。(Virtual DesktopはノイズキャンセルOFFの状態)PICO Connectでは2つあるマイクをそのまま使用した16bit 48000Hzのステレオ録音になりますが、Virtual Desktopはモノラルになるという違いがありました。

前半がPICO Connectでの録音、後半がVirtual Desktopでの録音。PICO Connectでは2chでの録音となる。

スクリーンショットの波形を見て分かるとおり、PICO Connectの音量100は爆音なので、十分に注意して再生してください。(ちょっと声枯れてるけど勘弁ね)

デュアルマイクだったPICO 4に対して、PICO 4 Ultraではマイクが4つに増えて空間オーディオの録音をサポートするといったハードウェア面で大きな変更がありますので、時間のあるときに改めて録り比べをする予定です。(※VRChatにおいてはステレオマイクは左側音声のみ拾って尚且つモノラル音声出力になると思うので、ステレオマイクかどうかはあまり関係ないはず……?)

音声の遅延に関してはWindows側で監視した限りでは殆ど感じられませんでしたが、VRChat上ではリップシンクの反映までに若干の遅れが見られました。無線接続であることを考慮しても十分許容範囲の遅延だと思います。Wi-Fiの接続具合などの問題で、マイクが入力されるまで1~2秒も遅れるような大きな遅延が発生してしまった場合は、ビットレート設定を見直したり一度接続を切って再接続してみると良いかもしれません。

ノイズ抑制機能があるとのこと

マイクに関しては、より詳しい情報をまとめている方がいらっしゃいます。PICO 4関連情報を探すと必ず見かけるので皆さんご存じの、みみずくさんの記事です。

Pico4のマイク設定について|みみずく
2024/9/19 VRCのノイズ抑制について記載しました。 Pico connect でのマイクについて Pico connectのバージョンを10.2.7にしてください。 マイクの設定が修正されました。 Ver.10.1.5からマイク設...

その中で、「同じ音が続くと少々過剰にノイズカットされる機能がある」という情報がありました。それは知らなかったので驚いたのと同時に、詳細がとても気になったのでどのぐらい過剰か試したところ、こんな感じでした。

大体2秒連続音が続くとカットされるようです。VRChatでノイキャン無しで使っていて、爆音でファンを回してるPCや扇風機の音が全然入らなかったり、家族が喋っていても割と平気だったりするのはなんとなく感じていましたが、これは知らなかった……。なかなか気が付かないですね。

以下は「あーーーー」って言ってるだけのしょうもない音声サンプルです。先程より大きめの声を出してるのでちょっと割れ気味かな?(音量70)

ちなみに風量を上げたサーキュレーターの目の前に居るときの音はこんな感じでした。(音量70)

その他機能について

コントローラーの遅延が小さい(気がする)

「PICO Connect」にはコントローラーのトラッキング感度の設定があります。デフォルト設定の50%で利用していますが、軽快にトラッキングしているように感じられました。100%まで上げるとかなり敏感にトラッキングするようになるので、手ブレが酷くなります。速度重視なら感度高めにすると良いのかもしれません。(いや、分からない)

また、手を後ろに回した時のトラッキングも問題はなさそうです。トラッキングが外れてもある程度はなんとかしてくれます。

Windowsのスクリーンキーボードは呼び出せる

「Virtual Desktop」で左手コントローラーのXボタンを押すと専用キーボードが出てきて、そちらから文字入力することができましたが、「PICO Connect(Beta)」の頃にはそれがありませんでした。

10.1.5アップデートで、右上にキーボードボタンが追加されました。現在はWindowsのスクリーンキーボードを呼び出すことができます。

10.1.5アップデート時のUI

但し、PICO 4の場合は、PICO Connectで接続しているWindowsに対してBluetoothキーボードは利用できませんでした。PICO 4 Ultraについては、「キーボードとマウスでのインタラクション機能は、今後のOTAアップデートで提供する予定です。」と記載されているので、いずれ利用できるようになるかもしれません。

また、マルチディスプレイ環境だと、PICOコントローラーだけではスクリーンキーボードの画面を跨いだ移動が行えません。他のディスプレイへウィンドウを動かす場合はPC側でのマウス操作が必要です。

PICO 4 Ultraの発表時に、最大3画面でPCやスマートフォンの画面をキャストする事が可能との情報がありました。スマートフォンのキャストに関しては今後のOTAで提供されるそうですので、その辺りに関してはPICO 4 Ultraを入手次第追記予定です。

コントローラーから手を離して物理的なキーボードを使用する時は、ハンドトラッキングをオフにしておくことをおすすめします。PICO OSの更新でシステムジェスチャーが変更されたので大丈夫そうです。

マルチディスプレイの切り替えで(僅かに)時間がかかる

「Virtual Desktop」ではディスプレイ間の移動はYボタンで瞬時に切り替えができましたが、「PICO Connect」は左上に表示された1や2と表示されたボタンを押して切り替えることになります。ディスプレイの切り替えが完了するまでほんの少しだけ読み込み時間が発生します。

マルチディスプレイ対応そのものについては、ディスプレイを跨いだウィンドウの移動が出来ないこと以外は問題なさそうです。

接続が切れても復帰できる

USBケーブルが外れたりWi-Fiネットワークの問題が生じるなどして、PCとの接続が切れてしまっても再接続が可能です。たとえPICOの電池が切れてシャットダウンしてしまっても、SteamVRなどは保持されています。充電して起動すれば、そのままPCVRへ復帰できます。

これは「Virtual Desktop」も同様です。接続が怪しいときなど、PICOヘッドセット側のアプリを立ち上げ直したりしてもPC側のSteamVR等は起動したままなので大丈夫です。

管理者権限で動くので注意

「PICO Connect」は管理者権限で動作します。

「XSOverlay」などでマウスカーソルが「PICO Connect」のウィンドウと重なると操作できなくなるので、「XSOverlay」に管理者権限を付与しておく必要があります。(XSOverlayの設定内にあります)

SteamVRからバッテリー残量は確認できない

「PICO Connect」のUI上でHMDとコントローラーのバッテリー残量を確認できますが、StemaVRに送ってはくれないようなので、「XSOverlay」などで確認したり通知することはできないようです。「ALVR」や「Virtual Desktop」ではHMDのバッテリー残量のみ取得可能でした。今後の対応に期待したいですね。

SteamVRでのコントローラー設定について

アップデートで角度調整が可能に

SteamVR内でコントローラーの位置や角度を調整出来るようになりました。

VRChatにおいて、両手でハートを作るハンドジェスチャーを入れている時などに重宝します。

Motion Trackerの欄は何?

PICO専用の周辺機器である、PICOモーショントラッカーの設定もあるようですが、まだ所持していないのでそちらに関しては不明です。公式サイトの説明によると、PICO NEO 3以降で使用可能で全身モーショントラッキングデータをSteamVRと共有できるとの事です。

9軸IMUセンサーと赤外線センサーの複合タイプで、PICOコントローラーと同じようにヘッドセットのトラッキングカメラの範囲から外れても位置推定してくれる……らしいです。こちらは入手次第、別記事で紹介する予定です。

PICO Motion Tracker | PICO Japan
全身の動きの追跡がかつてないほど現実的になりました。すべてはあなたの思い通りに動きます。

(※今のところはPICO側のPICO Integration SDK 3.0.0がUnityやUnreal Engineのアプリケーションしか対応しておらず、OpenXRの方はモーショントラッカーに必要なエクステンションが存在しないそうです。OpenXRでのトラッカーサポートが追加されない限りは、Virtual DesktopやALVRでPICOモーショントラッカーを扱うことが出来ないようなので、今のところはPICO Connectを介したときしか使えません。)

バインドはPICOコントローラー用

また、SteamVRからQuestのコントローラーとして認識される「Virtual Desktop」とは異なり、「PICO Connect」ではPICOコントローラーとしての扱いになります。バインドは設定し直すことになるので気をつけてください。一応、互換モードでQusetのコントローラーとして動作するようにはなっています。

デフォルトのコントローラーボタン割り当て

左スティックleft_axis0
右スティックright_axis0
左トリガーleft_axis1
右トリガーright_axis1
左グリップleft_axis2
右グリップright_axis2
Aボタンright_a
Bボタンright_applicationmenu
Xボタンleft_a
Yボタンleft_applicationmenu

SteamVR側で割り当てされていないaxis3やsystemなどは、どういった挙動をするか調べていません。ごめんね。

XボタンでSpace Dragする例

VRChatを楽しんでいる方であれば、「OVR Advanced Settings」のSpace Drag機能でプレイスペースの高さを変えて飛んだり地面に埋まったりするのも必須な設定ですよね。こちらもXボタンだけでドラッグ操作と高さリセットを行えるようにしてみます。

OVR Advanced Settings
OVR Advanced Settings
開発者: OVRAS Team
金額: 920 JPY

コントローラーバインド設定を見てみると、詳細設定に長押しが2種類あります。2つある長押しのうち、片方は一定時間長押しを続けると実行されるものです。今回は長押し1をリセット(resetoffsets)に割り当てて、長押し2をSpace Drag(lefthandspacedrag)にしてみましょう。

motion欄のXボタンにresetoffsetsとlefthandspacedragを割り当てる

長押しを続けるとSteamアイコンが表示され、Steamアイコンの周りをインジケーターが1周するとリセットが実行されます。インジケーターが1周する前にボタンを放す場合はリセットは実行されません。

【VRChat】ピースサインしか出せなくなったときは

コントローラーから手を離してもピースサインになってしまうときは、タッチセンサーにトラブルが起きてると思われます。とりあえず該当するセンサーのタッチ操作を割り当て無しにすると対処できます。恐らくスティックのタッチセンサーが帯電しています。

PICO 4コントローラーで「ピースサイン」しか出なくなる問題に対処する(VRChat向け)
PICO 4コントローラーが誤作動をしてしまい、手を離してもVRChat上でピースサインが出てしまう問題に対処しました。情報としては既出のものです。 電池を付け直したり電源を入れ直すと一時的に直るので、多分帯電してるとかなんでしょうが、St...

【VRChat】人差し指だけが曲がるなど、ジェスチャーがおかしいときは

VRChat 2024.3.1(ビルド1490)から、SteamVR Input 2.0とQuestを使ったPCVRでのハンドトラッキングサポートが追加されています。

しかし、PICO Connect経由ではコントローラーのバインドがおかしくなり、人差し指や親指だけが曲がるなど、殆どのジェスチャーが行えない状況になってしまいます。これはSteamVRからはQuestコントローラーであると認識がされるVirtual Desktopでは発生しませんので、PICO Motion Trackerを使う為に乗り換えた方は困惑していると思います。

[1485]Gestures do not work properly on Pico4. | Open Beta | VRChat
Gestures are not working correctly when Pico4 is connected with Pico Connect. I can't do the peace, rock'n'roll gesture.

ひとまずの対処方法として、両手のスケルトン入力をオフにするとジェスチャーがおかしいのは直ります。ハンドトラッキング関連も、PICO Connect及びPICO向けのVirtual Desktopでは未対応なので、今のところはこれだけでほぼ解決するはずです。

バインドの設定からスケルトンを選択

右手と左手のスケルトンの割り当てを選択(画像では左手を選択しています)

スケルトンアクションを「未使用」にする(同様に右手も「未使用」にしておいてください)

もし今後PICO Connectにもハンドトラッキング対応が来た場合は、元の設定に戻すなどの対処が必要になるはずですのでお忘れなく。

既にハンドトラッキングのテストは行われており、近いうちに提供される可能性がありそうです。VRChatにおいてハンドトラッキング有効時にコントローラーのトリガーボタンが機能しないバグがあるらしいので、その辺りが解決してからリリースされるかもしれませんね。

公式の機能で十分な品質

「Streaming Assistant」は試していないので比較できなくて申し訳ないのですが、過去の評判を見る限りでは、「PICO Connect」になったことで品質はかなり向上したのではないかと感じられました。鮮やかな色合いでPCVRをやれるのが魅力のひとつだと思います。また、PICOモーショントラッカーを使用する場合は現状「PICO Connect」一択です。

PCのデスクトップを操作する用途としてはイマイチな部分がありますが、SteamVRでPCVRを楽しむのは快適に行えました。PICO公式の機能で無料ですから、気軽に試せます。Betaの頃から結構しっかりとしていて、正式版となった現在もかなり安定して動いています。あとはSteamVRへのバッテリー残量通知やハンドトラッキング対応など、今後のアップデートで追加されることに期待したいですね。

2024/04/10:ビットレートについて追記
2024/04/17:Radeon環境での品質について追記
2024/04/27:超解像度ビデオ機能の効果について追記
2024/06/20:10.1.5アップデートによる解像度とビットレート設定の追加などを追記
2024/06/20:ASWについて勘違いしていたので修正、パフォーマンス測定と幾つかの古い情報を手直し
2024/06/22:解像度別の検証などを追加、細かな手直し
2024/08/20:PICO 4 Ultraが発表されたので少しだけ追記
2024/08/21:古い情報などを整理
2024/09/02:10.2.7アップデートについて追記
2024/09/12:トラッカー対応の情報を追記
2024/09/14:VRChatにおいてジェスチャーが機能しない問題について手直し、PICOモーショントラッカーの参考URLを日本版に変更
2024/09/16:基本操作一覧を追記
2024/09/19:マイク音量についてより詳しく追記
2024/09/20:あちこち微修正しつつレンダリング解像度とエンコード解像度の話とノイズキャンセリングについて追記(PICO 4 Ultra早く届いて欲しい~)

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