ENVY x360 13-ay0000 専用アクティブペンについて

HP MPP アクティブペンが反応しづらい

ENVY x360 13-ay0050AU(パフォーマンスモデル)と組み合わせて利用したときに、ON荷重が大きくて反応しない若しくはしづらいという問題が起きました。ENVY x360 13そのものの出来がとても良いだけに、ペンはイマイチだねとだけ言ってさらっと流せなかったので、追加でペンを買ったりして色々と試しました。

先に結論だけ書いておくと、

  • 「HP MPP アクティブペン」及び「Bamboo Ink Plus」「Surfaceペン」では軽いタッチで反応しない(正確な測定値ではないが25~30g程度の荷重が必要)
  • MPP2.0未満の古いペンだと大方問題なし(今のところは1024段階のペン買っておけばいい
  • 他機種では低荷重で動作するので、HP MPP アクティブペンそのものは悪くはないはず(現行のSurfaceや古いN-Trig対応機で良好)
  • 問い合わせたところ、サポート曰く現時点での仕様っぽいとの回答(あんまり把握してなさそう、アップデートとかあるといいな)
  • 純正ペンのペン先は隙間なくきっちり挿し込むとNG、不良個体に注意
ENVY x360 13-ay0050AU
ペンペンの重量ON荷重(誤差±3g)
HP MPP アクティブペン13g約25g
Surfaceペン(EYU-00015)21g約23g
Bamboo Ink Plus(※青軸)17g約28g
ATiCのペン(ME-MPP308)19g約17g

※誤差は家庭用はかりの仕様によるもの

検証した環境は「BIOSバージョンF.07~16 Rev.A」のものになります。Windows 10 Homeは「バージョン1909~21H1」です。Windows 11 21H2でも同様でした。

最小ON荷重が大きい

詳しくは後述しますが、HP MPPアクティブペンのON荷重は「約25g」でした。要するに、ペン先に20gちょっとの力が加わらないと書き始めることができないわけです。

25gってどのぐらい?って話ですが、ペンの重さが約12.5gありますので、少なくともペンの重さだけでは一切反応しません。参考までに他製品のON荷重を紹介しておくと、ワコムのIntuos 3のような古いペンタブレットや、他社の安価な液晶タブレットでも10g程度です。最近の製品であれば10gを切っているのは当たり前であり、同じMPPという規格を用いているSurfaceペンも最新モデルでは12gから9gへと軽くなっています。iPadのApple Pencilに至っては1g未満で反応します。

さて、ペンのON荷重が大きいのは、特に軽いタッチで描いている人にとっては致命的な問題です。ペンを置いた瞬間はまだ筆圧を検知できていないので、線の書き始めが描画されず、途中から線が出てくるような状態になります。また、線を引いている途中で荷重が約25gを切ると線が途切れてしまいます。この点においては、かなり繊細であるワコムのペンやApple Pencilに慣れているせいもありますが、この状態では4096段階の筆圧検知と傾き検知で表現の幅が~とか言ってる場合じゃないです。

カツカツと音が鳴る程度の筆圧では、ほとんど拾ってくれない感じです。(特にWindows標準のペイント3DやWhiteboardのようなアプリで顕著)

現状、ENVY x360 13とHP MPPアクティブペンの組み合わせで繊細なタッチを表現するのはかなり難しいと感じています。

筆記具ではなく単なる入力デバイスとして利用するにしても、軽く閉じるボタンをつついても反応しない場面に遭遇したり、ドラッグ中に筆圧が足りなくなるとダブルクリック扱いになってウィンドウが最大化してしまうなど、ウィンドウの移動が上手くできなかったりと少し厳しい部分があります。ノートPCとして使っている状態だと、タブレットモードよりも力がかかりにくくなるので反応しにくい場面が増える感覚がありました。

画面に対してペンを垂直に立てて書く場合はそれほど気になりませんが、ペンを寝かせると筆圧が足りなくなり途端に反応が鈍くなります。画面に手のひらを置いて書くときに違和感を覚えるかもしれません。

ちなみにタッチパネルそのものは感度がよく、使い勝手も問題ない仕上がりとなっています。

これまでに様々な方式(EMR、AES、N-Trig/MPP)のペン対応タブレットや2 in 1のPCを試してきましたが、しっかりとした筆圧がないと線が引けないってレベルのものは初めてだったので驚いています。(ガラスを貼るとイマイチってのはもちろんあった。)

MPPなので当然ジッターは生じる

HP MPPアクティブペンは、ワコムAES方式のように静電方式のペンということもあり、ゆっくりと線を引くとジッター(線がガタガタとする、波打つようになる。)が発生してしまいます。これに関しては長年大きな改善が見られない部分であり、仕方のない部分だと理解する必要があります。

ジッターはAESやN-Trig(MPP)の宿命ですので、イラスト目的の方はそこを承知の上かと思います。なるべく早くペンを走らせたり、補正を強めに掛けてみるなどの工夫が必要になる場合があります。

下3本がゆっくりと書いたもの。ジッターが生じてしまいます。

ジッターについては、個人的には許容レベルであると感じていて、補正のないアプリケーションで余程ゆっくりと書かなければ気になることはないと思います。

ホバーの高さは5mm

ペン先を画面に近づけたときに、カーソルが出現するまでの高さを測りました。ペンに磁石が入っており金属製の定規にくっつくので、反応するまで徐々にペンをずらした結果が上の図です。

ホバーの高さは約5mmと標準的な高さになります。参考までにワコムのデバイスもCintiqでは読み取り可能高さは5mmとなっています。本体とペンの組み合わせによっては1~2cmぐらいから反応する場合もあるとのこと。

また、パームリジェクション機能は搭載されていますが、ホバー中はタッチも反応するため、誤動作が目立つ場合は「ペンの使用中はタッチ入力を無視する」設定を有効にすると良いでしょう。

但し、ペンをホバー範囲外まで離してからタッチ入力が反応するようになるまでに若干遅れが生じるので、手でキャンバスを移動しながら描くのはスムーズに行いにくくなります。タッチパネルの反応の良さもあって、「CLIP STUDIO PAINT」のウィンドウサイズが変わってしまったり、アクションセンターが出現したりと誤動作が激しかったので、自分は無視する設定を有効にしています。(CLIP STUDIO PAINTのウィンドウ枠は太めなので、画面外からスワイプするとウィンドウサイズが変わってしまう。)

筆圧調整機能は無し

「HP Pen Control」アプリでサイドボタンの割当変更はできますが、筆圧調整については、Surfaceのように筆圧調整機能は存在しません。例えばWhiteboardや切り取り&スケッチ、ペイント3Dなどでのアプリケーションでは調整無しで使用することになります。

Windows Ink ワークスペースから呼び出せるWhiteboardアプリでの筆記。油断すると途切れてしまいがち。

ペイント3Dの場合は鉛筆ツールは途切れにくいです。しきい値が低めなのか、薄っすらと線が入ります。

Wordでも筆圧は機能するものの、軽いタッチで線を引くと途切れてしまいます。名前出てる?これはええねん。

線を引くのに使うツール(ペン・鉛筆など)によって反応の具合が大きく変わります。手書き入力パネルなんかもペイント3Dのペンツールと似たような感じがあり、走り書きをすると拾い損ねるときがあります。

もちろん、絵を描くのに使うのはCLIP STUDIO PAINTなので、筆圧グラフを調整してなんとかマシにできないこともないのですが、低筆圧で反応しない点はどうにもならないので、筆圧コントロールが厄介です。油断して細かな線を入れようとすると反応しないのですから。

ブラシサイズを頻繁に変える方は問題ないと思いますが、筆圧だけで線の太さをコントロールして描くタイプの人はちょっと厳しいです。特に着色の際に微妙なタッチを加えようとすると思うようにいかない場面に直面します。

WinTabドライバは動作する

TabletPC APIに対応したソフトであれば何もせずとも筆圧検知しますが、WinTab APIを利用している古いソフトなどではWinTabドライバがないと筆圧を検知しません。

Microsoftダウンロードセンターから、WinTabドライバをダウンロードしてきてインストールすると、ENVY x360 13でもWinTabを利用してるソフトでも筆圧が効きました。試す場合は自己責任でどうぞ。

Download Surface Pro 3 from Official Microsoft Download Center

Photoshop CS6 ExtendedやVRoid Studio等で筆圧が効くことを確認しています。

尚、何らかの理由で動かなくなった場合は、一度アンインストールをしてから入れ直すと再び動作するようになりました。インストーラーからの修復だと駄目でした。コントロールパネルから一度アンインストールしましょう。

強めの筆圧で筆記する人向けか

普段からそれなりに筆圧をかけていて、なおかつ素早くペンを走らせるような方であれば、特に違和感を覚えることなく扱えるのではないかと感じました。また、普段からペンデバイスを利用しない方や、初めてデジタルでイラストを描こうという方も気にされないのではないかと思います。

なお、線をゆっくりと書く方は筆圧がどうこうの前にジッターにやられるので、ペイントソフト側で強力に補正をかけるなどの対策が必要かと思われます。

とりあえず試し描き

MPP(N-Trig)な時点で期待するのが間違っているのでは?というのはそれはそうで、イラスト用途を最優先で考えているのなら、悪いこと言わないので素直にraytrektabのようなEMR方式の機種かiPad + Apple Pencilにしたほうがいいと思います。(ジッター的な意味でも)

文句ばかり言って何も描かないのもアレなんで、HP MPP アクティブペンで軽く描いてみました。

筆圧グラフを調整して試行錯誤してみましたが、ペンツールを基準に調整をするとブラシツールなどがイマイチになったりと調整が難しい状況でした。ツールによっても差が大きく、鉛筆ツールのようなものだとなかなか反応してくれなかったりします。筆圧のコントロールでブラシサイズを調整して色を塗るような描き方は不向きです。

描きかけの別のイラストにも使ってみましたが、線画については意識しないとやはり入りの部分を描き損ねることがしばしば。描けないことはないものの、なかなか思うような線が引けず、流石に時間がかかりすぎるなと判断してCintiq Pro 13で描くことにしました。

複数のツールを使わずに、どれかひとつのツールに特化した極端な設定をすると大分マシになったような感じがします。筆圧や傾き周りはツール別の個別設定がありますが、ペンツール1本で全部描く!ぐらいの割り切りが必要かも……。

ちくしょう、なんてこった……!旧製品がイマイチだったことを考えると事前調査が甘かった!

初期不良を疑ってみる

UEFIから起動できるHPの診断モードでも、ペンの反応具合は微妙な感じだったので、Windows 10起因の問題ってことはちょっと考えにくいかなと思います。

後日、店頭に展示してあるMicrosoftの「Surface Laptop 3」や「Surface Pro 7」、ENVYと同じHPの「Spectre x360 2018年モデル(3WH38PA)」相手にHP MPP アクティブペンを利用してみたのですが、そっちだとかなり素直な感触でした。ペイント3Dなどで走り書きしても途切れることがほぼ無い感じでしたが、Spectreの方はSurface比で微妙な感じはあるのでやはりENVYと同程度かもしれません。

純正ペンは一度交換もしましたが何ら変わりがなく、ペンの不良は考えにくかったのでPC側の初期不良も疑いましたが、ネット上での情報を探してみると同一モデルである「ENVY x360 13 ay-0050AU」において、「Surface Pro 3のペンでは問題ないものの、MPP2.0の互換ペン(※HPの専用ペンではない)での利用時に筆圧を掛けないと線が引けない。しかしMPP2.0ペンはSurface Pro 3側では問題がない。」という似たような状況になっている方がいらっしゃったので、初期不良なのかどうかなんとも言えない感じがしてきました。

「ENVY x360 13-ay0050AUでMPP2.0ペンだけ筆圧検知が鈍い」というのは自分を含めて3例把握しています。その他詳細なレビューについては情報が少ないです。また、ENVY x360の2018年モデルの頃にあった、アクティブペン2の傾き検知機能が、Spectreでは反応するがENVYでは反応しないという問題があった際は、ファームウェアアップデートの過程でペンの感度の調整も入ったという情報もありました。もしこれが初期不良でないのであれば、アップデートに期待したいところではありますが……。

ペンに個体差あり、あまりにも反応しないときはペン先を確認

このレビューをしている途中で、訳あってもう一本純正ペンが手元に増えました。その新しく増えたペンも、特に変わりなく反応が鈍かったのですが、久しぶりに新しく増えた方のペンを使ってみたところ、全く反応しなくなっていました。

充電が切れたのかとフル充電してみるも反応なし、同じ純正ペンを含む他のペンは特に問題がないことからENVY側の問題ではありません。

さて、どうしたものかとよくよく見てみると、ペン先にあるはずの「遊び」がありませんでした。

本体とペン先の隙間部分ですね。写真上側に写っている1本目の純正ペンはここまで深く挿し込めないので、個体差がありそうです。ペン先を引き抜いてみても特におかしな部分は無いように見えます。

一度引き抜いて挿し直しても、奥までしっかり挿し込んでしまうとダメなので、若干緩めに挿しておきました。

同じ純正ペンでも、ペン先に遊びが無いと全く反応しません。かなり筆圧を掛けると辛うじて反応しますが、ディスプレイ側が危ういです。

ちなみに、正しくない使い方ではありますが、ペン先はかなり緩めても反応はします。

写真は緩めすぎなんですが、少し緩めた状態であればわりかし普通な挙動になっているように感じます。ON荷重が劇的に軽くなるかというと別にそんなことはないです。ENVYではなく他機種で使ったほうが反応がいいのはそのままです。また、緩めておいても使っているうちにしっかりと挿し込まれてしまうので、解決策としては微妙です。

純正ペンには替えの芯が2本付属していますが、奥までしっかり挿さる個体だと替え芯も同様なので、交換したほうが良いかもしれません。いや、普通に不良品なので交換しようね。(というかこれ交換品なんだけど……)

古いMPP(N-Trig)互換ペンは問題ない?

そういえばと思い、STYLISTIC Q702/GのN-Trigペンを引っ張り出して試してみたのですが、こっちのが描き心地はいいですね。

Core i5搭載、富士通のタブレットSTYLISTIC Q702/Gのスタイラスペンを試す | ぴけっとガジェット

レビュー後、タブレット本体の不良でまるごと交換したら1ボタンの別のペンになってしまったけど……。

以前レビューした富士通のタブレット用のペンです。こちらはこれといって問題ない挙動で、割と軽い筆圧でも大丈夫です。レビューした通り、筆圧の段階が低そう(どこにも書いてないので分からない、この当時発売されていたSurface Pro 3と同様に256段階だと思われる。)ということで細かな描画には全然向いてませんが、線が途切れるストレスからは開放されました。しばらくは富士通タブのN-Trigペン常用しようかな……。

あと、こっちの方がジッターは気にならないですね。筆圧段階の差って事は考えにくいので、傾き検知の有無が大きいのかもしれません。

本当に他のペンなら大丈夫なのか

もしENVY x360を購入する予定でペンも使うかもしれないという方は、MPP2.0ペンが相性悪いようなので、古い規格のものを買ったほうが良いかもしれません。

一度検証を始めると気になって仕方がないので、人気のあるMPP2.0ペンである、Bamboo Ink PlusとSurfaceペン(2017年モデル)とATiCの安いペンをヤケになって購入しました。だいぶお金かけた気がしますが「これはええねん」ということで気にしないことにします。

Bamboo Ink Plusを使ってみる(NG)

というわけで、届いたので試してみました。結論から申し上げると、ON荷重については特に変化は感じられませんでした。(後ほど計測したら最も反応が悪かったです)

ペンの質量が、約12.5gから16.5gと重くなるので、単純に数グラム分の違いはあるような気がしないでもないですが、描き始めの反応しづらさには違いがないです。

Bamboo Ink Plusの利点を挙げるならば、異なる種類のペン先に交換可能であることと、Bluetooth接続してペン上部のボタンでWindows標準のペンのショートカット機能が使えるというところでしょうか。また、HP MPP アクティブペンには、ペン先にほんの僅かな遊びがある(※沈み込むわけではない)のでペン先に触れてみるとカチャカチャと鳴りますが、Bamboo Ink Plusではそういうことはないです。

AES対応デバイスでの利用であればドライバのインストールで筆圧調整が可能かと思われますが、ENVY x360 13はMPPなので筆圧調整はありません。ペイントソフト等アプリケーション側で個別に対応することになります。サイドボタンの変更はHP Pen Controlで代用できました。

ブルーの芯を使ってみる(NG)

Bamboo Ink Plusには替えの芯の中に「ブルーの芯」が付属しています。

一部のデバイスにおいて、適切に描画できないなどの互換性に問題がある場合はこの芯を利用するように案内がされています。

ジッターがマシになるといった話も聞きますね。このブルーの芯でも傾き検知は機能していました。

ENVY x360 13と合わせて利用したところ、心なしか描きやすくなった感覚があり、線画作業時もストレスが減ったように思います。テストに利用しているKritaにおいてはON荷重は特に変化がないか、気持ち軽くなった気がする程度の違いでしょうか。1~2g軽くなったような、なってないような……そんな感じですが、少なくとも純正ペンよりは気持ちマシです。

ウィンドウの移動などもマシになった気がしないでもないレベルなので、ここまでくるとほぼ誤差みたいなものですが。気の所為というやつですね!

最新のSurfaceペンを使ってみる(NG)

型番はEYU-00015です。

新型のSurfaceペンは、Surface上においてはON荷重が約9gに改善され、非常に軽いタッチで描画ができるようになっています。……が、ENVY x360 13上では全然そんな事はありませんでした。ON荷重は変わりません。

Surfaceペンの重量は約21gということで、ペンの自重+αで筆圧が0%で反応するかしないかというような感じです。(後述するKrita上での計測)

ペンが重たい分だけ拾いやすくはなりますが、ペンを置いた瞬間を拾えないのでやはり描き始めの部分が幾らか抜けてしまいがちです。

そうそう、画面横に磁石でくっつくようになってるので、その点はBamboo Ink Plusより美味しい部分かなと思います。純正ペンより重たいのでずり落ちそうにはなるんですが。間違ってもペンを横にくっつけたままPCを移動させたりしないようにしましょう。落っことします。

もう少し情報を取ってみる

体感ではなく、もう少し数値的なものを見てみたいということで、現在の筆圧などの情報が取れるソフトウェアがないか探してみたところ、オープンソースのペイントソフトである「Krita」にTablet Tester機能が用意されていました。

描き始めの具合はHP MPP アクティブペンとBamboo Ink Plusとで大きな違いは見られず、筆圧を検知して描画を開始した時点では筆圧4%前後を記録しています。1%未満を示すときもありました。描き始めは微妙すぎてさっぱりわかりませんが、明らかな違いがあるとすれば、HP MPP アクティブペンの方が、Bamboo Ink Plusよりも少ない筆圧で最大筆圧まで到達できるというぐらいでしょうか。大雑把に10~15%程度の差があるように感じられ、特に純正ペンは急に太くなりやすいことから、ペイントソフト側の筆圧グラフ無調整での筆圧コントロールは少しシビアなように思います。

もうひとつハッキリとしていることは、どちらもペンの自重だけでは全く反応が見られなかったということです。ちなみに、古いN-Trigペンは乾電池分それなりな重量がありますが、ペンの自重だけで30%の筆圧が記録されます。

家庭用の電子はかりを用意して計測したところ、ENVY x360 13で使う場合、恐らく25gぐらいは筆圧をかけないといけないようです。感覚としては「Wacom One 液晶ペンタブレット 13」がON荷重19gで扱いづらいというのと似たような感じではないかと思います。もっとも、ENVYではどのアプリケーション上でも変化はなさそうですが。(CLIP STUDIO PAINTだと一番軽いかも?)

4万円台で買える「Wacom One 液晶ペンタブレット13」をプロ目線でチェックした (2/4) – ITmedia PC USER

Wacom Oneを使ってみて問題ない方であればきっと大丈夫なのではないかと思いますが、現在のWacom Oneは最新のドライバにおいて、約19gあったON荷重が約6gへと改善されているようなので、今はあんまり参考にはならないかもしれません。

プロ絵師が今、“複数スキルで輝く時代”に必要な高性能PCを勧める理由 (2/2) – ITmedia PC USER

では、これらのペンをENVY x360 13ではなく、他の機種で使うとどうなのかというと、富士通の「STYLISTIC Q702/G」では自重どころか触れた瞬間に反応します。HP MPP アクティブペンとBamboo Ink Plusのどちらも、ペンの自重のみでは16~18%程度の筆圧がかかっており、フェザータッチでは1%未満の数値がしっかりと記録されます。ON荷重の具合はCintiq Pro 13とプロペン2の組み合わせと同じぐらいであると感じられました。(おい、良いペンじゃないか!)

尚、前述した「Surface Laptop 3」や「Surface Pro 7」については試せていません。

ということは、やはり本命はMPP2.0未満の古い規格のペン……!

MPP2.0未満のSurface互換ペンを試してみる(OK)

Amazonで2,000円ぐらいで売っている、ATiCのスタイラスペンを購入しました。ポイントとか使ったので200円。型番は「ME-MPP308」のようです。

Amazon

MPP1.0なのか1.5なのか定義が分からずハッキリしないのですが、1024段階となっているので少なくともMPP2.0ではありません。もちろん傾き検知もBluetoothもなしです。

ごく普通の電池式の2ボタンペン。

質感も悪くない。

ペン先は交換可能で、替えの芯が付いてくる……のですが、付属のピンセットでは滑って抜けず、ペン先が削れていくばかりでした。ううむ、安いだけのことはある……。

肝心の描き味については文句なしです。フェザータッチでもしっかり反応します。そうそうこれだよこれって感覚があり、ようやくゴールにたどり着けたような気持ちになりました。やっとマトモに使い始められるのでスタート地点なんですが。

MPP2.0未満ということで当然ながら1024段階ですし、傾き検知もありませんから、古めのペンタブレットを触っているような感じは否めません。それでも先程試したN-Trig時代の古いペンのようにペン先が引っ込む感覚はありませんし、普通のペンです。

自重でギリギリ反応しないSurface ペン。

自重で反応して30%ちょっとの筆圧を記録するATiCスタイラスペン。

商品ページによるとペンは14gとのことですが、電池を入れると約19gとなります。倒れないように手で軽く支えてるので余計な重さが入ったりしてそうですが、明らかな差が出ています。

とりあえず、現時点においては筆圧1024段階と謳っているSurface用互換ペンを買っておけば間違いないでしょう。

値段的にペンの不良品を引き当てる可能性はそこそこある気がしますので、不良品の返品を覚悟の上でAmazonで注文するのが無難ではないかなと思います。

ON荷重計測結果まとめ

キッチリとやるのがなかなか難しいので、大雑把ではありますがKritaを使った計測結果です。電子はかりを用いたので、ペンに1円玉を1枚ずつ乗っけるヘンテコなやり方よりはずっとマシなはずです。

使用した電子はかりの計量精度が±3gとなっているので、正確な結果ではないことを予めご了承ください。

ENVY x360 13-ay0050AU
ペンペンの重量ON荷重(誤差±3g)
HP MPP アクティブペン13g約25g
Surfaceペン(EYU-00015)21g約23g
Bamboo Ink Plus(※青軸)17g約28g
ATiCのペン(ME-MPP308)19g約17g

当初のアナログな計測方法を用いていたときは、ON荷重は20gちょっとかなと書きましたが、実際はもっと大きかったようです。Surfaceペンの本体重量が21gなので、25gぐらいまでは誤差のようなものかなと思いますが、Bamboo Ink Plusが30g近くまで力を加えないといけないというのには驚きました。あれぇ……?

最もON荷重の軽かったATiCのペンですが、ペンそのものの精度のせいか、それとも古い規格のせいなのか、筆圧20%ぐらいからスタートしているようです。これについてはアプリケーション側の調整でなんとかなりますので、大きな問題ではありませんが、恐らく筆圧レベルは1024段階フルに活用できていないことになりますね。

ついでに富士通の古いタブレットPC(STYLISTIC Q702/G)でも計測をしました。N-Trigだった頃の古いデバイスです。ペンよりも軽いON荷重となったので計測が難しく、かなりの誤差が出ますがかなり軽かったです。(量り方が悪いのはそう。)

STYLISTIC Q702/G
ペンペンの重量ON荷重(誤差±3g)
HP MPP アクティブペン13g約2~3g
Surfaceペン(EYU-00015)21g約7~8g
Bamboo Ink Plus(※青軸)17g約2~3g
ATiCのペン(ME-MPP308)19g約15g

ATiCのペンもちゃんと筆圧0%から認識していました。MPP2.0対応ペンのON荷重が軽いのがとても良いですね。Cintiqとプロペンの組み合わせと遜色ないように感じたというのもあながち間違ってはいなかったようです。

その他
デバイスON荷重
Cintiq Pro 13(プロペン/プロペン2)約1g
第6世代iPad(第1世代Apple Pencil)1g未満

最新機種では改善?

1年ぶりぐらいに出かける機会があったので、店頭展示機を触ってきました。

ENVY x360 13-ayと同じ時期に発売されたSpectre x360 13などは同様の挙動を示し、ON荷重は重たいという状況でした。しかし、画面比率が3:2となったSpectre x360 14ではとても素直な反応を得られました。

流石に計りを持ち込んで計測するわけにはいきませんので、並べて展示してあるSpectre x360 13との体感での比較となりますが、MPP2.0のhp MPP アクティブペンを利用しても軽いタッチで描画できたように感じられました。後発の機種であれば大丈夫なのかもしれません。

昨今の情勢もあり、新製品に関してはなかなか実機を試してから買うということがし辛くなっていますが、可能であれば試してから購入したいですね。入荷待ちで1年近く待たされるとかは勘弁ですが。

クリエイティブとは言い難い

MPP2.0の純正ペンをずっと使っていると気にし過ぎのように思えてきましたが、ペンを他のデバイスで使ったり別の古いペンを使ってみるとやはり明らかな違いがあります。手持ちのMPP2.0対応ペンの中では、ENVY x360 13上ではBamboo Ink Plusでのちょっとした落描きでも、特に傾きが入ると筆圧が足りなくなって線が掠れたり書き損ねたりと思うような線が引けず、かなりのストレスを感じました。ペンの重さやペン先のグリップ感の違いなどがありますが、新型のSurfaceペンについてもそれほど変わりはないように思います。

かれこれ5~6台のペン対応Windowsタブレットを試してきて、特に電磁誘導方式のWacom EMRペンではここまでストレスを感じたことはありませんでした。HP純正ペンと同じ静電方式であるWacom AESやN-Trig(MPP)のペンでは、確かにイマイチさはありましたが、今回はそれとは違う扱いにくさがあります。

あくまでもペンがタダで付いてくるようなオマケ(Intelモデルには付属してるらしい……。)であり、軽いメモ用だと言うのであれば文句は言いませんが、傾き検知や4096段階の筆圧に対応までして、クリエイティブな人達へ向けて「細かい部分までこだわりを」と謳っているのであれば、純正ペンでの挙動はもうちょっとなんとかなってほしいなと思います。ペン本来の性能に見合わない挙動を見ると、クリエイティブ用途としては論外だと言わざるを得ないです。

CintiqやiPad Proの代用品として使おうと思っているのであれば、まだその域に達していません。エントリー向けのWacom Oneが20g近いON荷重(現在は修正されています)でよしとしていた辺りを考えると、ENVYもプロ用途では無いのかなと。

かなり辛口に評価してるとは思ってますが、通常の倍以上必要な最小ON荷重(※他社製品の平均的なON荷重比)は厳しいです。ENVY x360 13においてペンを本気で使うつもりならば、1万円もする純正ペンを買う前にまずは1024段階の安いペンを試してみることをオススメします。ENVY x360 13の処理性能やディスプレイの美しさにはとても満足しているだけに惜しいです。

Amazon

2020-07-22:Bamboo Ink Plusを試したことと、Kritaでのテスト内容を追記。ファームウェアもF.07からF.11に更新(変化なし)

2020-07-23:替え芯であるブルーの芯をテスト。Windowsも2004へ更新。

2020-08-23:ちょっと手直し。

2020-08-28:2本目の純正ペンがおかしいことに気がついたので追記。

2020-09-13:ホバー距離を測ったので追記。替え芯についても追記。

2020-09-14:Surfaceペンをテストしたので、それを踏まえて全体の書き直しと追記。

2020-10-05:ファームウェアをF.13に更新しつつ、安物の互換ペンをテスト。

2021-01-26:文章の微修正。

2021-02-07:電子はかりを用意したので、ON荷重を再計測。

2021-10-27:Spectre x360でも軽く試したので追記。

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