ENVY x360 13-ay0000 専用アクティブペンについて

2020年7月21日

HP MPP アクティブペンが反応しづらい

ENVY x360 13-ay0050AU(パフォーマンスモデル)と組み合わせて利用したときに、ON荷重が大きくて反応しない若しくはしづらいという問題が起きました。ENVY x360 13そのものの出来がとても良いだけに、ペンはイマイチだねとだけ言ってさらっと流せなかったので、色々と試しました。

先に結論だけ書いておくと、

  • 「HP MPP アクティブペン」及び「Bamboo Ink Plus」では軽いタッチで反応しない(正確な測定値ではないが20g程度の荷重が必要)
  • MPP2.0未満の古いペンだと大方問題ない(自分は1本しか試せてない)
  • MPP2.0でも「最新のSurfaceペン」でも問題ないらしい(2人ぐらいそう言ってる、自分は試せてない)
  • 他機種では低荷重で動作するので、HP MPP アクティブペンそのものは悪くはないはず(現行のSurfaceや古いN-Trig対応機で良好)
  • 問い合わせたところ、サポート曰く現時点での仕様っぽいとの回答(あんまり把握してなさそう、アップデートとかあるといいな)

検証した環境は「BIOSバージョンF.07 Rev.A」「BIOSバージョンF.11 Rev.A」のものになります。Windows 10 Homeは「出荷時バージョンの1909」「バージョン2004」です。

さて、ペンのON荷重が大きいのは、普段から軽いタッチで描いている人にとっては致命的な問題です。筆圧をあまりかけずに描こうとすると、線は途切れ途切れになり、全く使い物になりません。その点がかなり繊細であるワコムのペンやApple Pencilに慣れているせいもありますが、この状態では4096段階の筆圧検知と傾き検知で表現の幅が~とか言ってる場合じゃないです。

筆記具として考えても、少し力をかけないと線が引けないのは不自然な感じです。タブレットモードにして文字を走り書きしてみましたが、何本か線が抜けてしまいます。お前の筆圧が低すぎるんじゃボケと言われればそれまでかもしれませんが、ボールペンですらこんなに筆圧を要することはないです。インク乾いてんのかな。

カツカツと音が鳴る程度の筆圧でもほとんど拾ってくれない感じです。

現状、ENVY x360 13とHP MPPアクティブペンの組み合わせで繊細なタッチを表現するのはかなり難しいと感じています。静電方式のペンですし、保護フィルムが貼ってあるので剥がすべきではありますが、ディスプレイの反射がキツいのと、そもそも剥がしても変わりません。

筆記具として利用しなくても、軽く閉じるボタンをつついても反応しない場面に遭遇したり、ウィンドウの移動が上手くできなかったりと、単なる入力デバイスとしても少し厳しい部分があります。ペン操作ではなくタッチパネル操作は文句なしの反応なんですが……。

これまでに様々な方式(EMR、AES、N-Trig/MPP)のペン対応タブレットや2 in 1のPCを試してきましたが、しっかりとした筆圧がないと線が引けないってレベルのものは初めてだったので驚いています。(ガラスを貼るとイマイチってのはもちろんあった。)

筆圧調整機能は無し

サイドボタンの割当変更はできますが、筆圧調整については、Surfaceのように筆圧調整機能は存在しませんので、例えばWhiteboardや切り取り&スケッチ、ペイント3Dなどでのアプリケーションでは調整無しで使用することになります。

Wordでも筆圧は機能するものの、軽いタッチで線を引くと途切れてしまいます。

もちろん、絵を描くのに使うのはCLIP STUDIO PAINTなので、筆圧グラフを調整してなんとかマシにできないこともないのですが、低筆圧で反応しない点はどうにもならないので、筆圧コントロールが厄介です。油断して細かな線を入れようとすると反応しないのですから。

当然ジッターは生じる

また、ワコムAES方式のように静電方式のペンということもあり、ゆっくりと線を引くとジッター(線がガタガタとする、波打つようになる。)が発生してしまいます。

ジッターはAESやN-Trig(MPP)の宿命ですので、イラスト目的の方はそこは承知の上かと思いますが、それ以前の問題があるので正直これで絵を描いていてもあまり良いところがありません……。

下3本がゆっくりと書いたもの。ジッターが生じてしまいます。

強めの筆圧で筆記する人向け

普段からそれなりに筆圧をかけていて、なおかつ素早くペンを走らせるような方であれば、特に違和感を覚えることなく扱えるのではないかと感じました。

なお、ゆっくりと描く方は筆圧がどうこうの前にジッターにやられるので、ペイントソフト側で強力に補正をかけるなどの対策が必要かと思われます。

とりあえず試し描き

N-Trig(MPP)な時点で期待するのが間違っているのでは?というのはそれはそうで、イラスト用途を最優先で考えているのなら、悪いこと言わないので素直にワコムEMR方式の機種かiPad + Apple Pencilにしたほうがいいと思います。(ジッター的な意味でも)

文句ばかり言って何も描かないのもアレなんで、HP MPP アクティブペンで軽く描いてみました。

筆圧を掛けすぎても線が太くなりにくいようにするなど、試行錯誤をした結果なんとか描けるようにはなったんですが、主に色塗りがツラいです。今回は凄く雑に色を置いただけですが、太めのブラシのまま細かいところを低筆圧でちょんと塗っていくスタイルだったので、微調整が利かなくて尚更相性が悪いんですよね。

描きかけの別のイラストにも使ってみましたが、線画については意識しないと入りの部分を描き損ねることがしばしば。描けないことはないものの、なかなか思うような線が引けず、流石に時間がかかりすぎるなと判断してCintiq Pro 13で描くことにしました。

ちくしょう、なんてこった……!旧製品がイマイチだったことを考えると事前調査が甘かった!

古いMPP互換ペンは問題ない?

そういえばと思い、STYLISTIC Q702/GのN-Trigペンを引っ張り出して試してみたのですが、こっちのが描き心地はいいですね。

Core i5搭載、富士通のタブレットSTYLISTIC Q702/Gのスタイラスペンを試す | ぴけっとガジェット

レビュー後、タブレット本体の不良でまるごと交換したら1ボタンの別のペンになってしまったけど……。

以前レビューした富士通のタブレット用のペンです。こちらはこれといって問題ない挙動で、割と軽い筆圧でも大丈夫です。レビューした通り、筆圧の段階が低そう(どこにも書いてないので分からない、この当時発売されていたSurface Pro 3と同様に256段階だと思われる。)ということで細かな描画には向いてませんが、線が途切れるストレスからは開放されました。しばらくは富士通タブのN-Trigペン常用しようかな……。

あと、こっちの方がジッターは気にならないですね。筆圧段階の差って事は考えにくいので、傾き検知の有無が大きいのかもしれません。

初期不良を疑ってみる

UEFIから起動できるHPの診断モードでも、ペンの反応具合は微妙な感じだったので、Windows 10起因の問題ってことはちょっと考えにくいかなと思います。

後日、店頭に展示してあるMicrosoftの「Surface Laptop 3」や「Surface Pro 7」、ENVYと同じHPの「Spectre x360 2018年モデル(3WH38PA)」相手にHP MPP アクティブペンを利用してみたのですが、そっちだとかなり素直な感触でした。

SurfaceやSpectreでは低筆圧でもほぼ問題なさそうで、ペイント3Dなどで走り書きしても途切れることがほぼ無い感じです。(とはいえSpectreの方はSurface比で微妙な感じはあるかも。パームリジェクションも反応してたんだろうか?)

どうやらHP MPP アクティブペン自体は、ON荷重が軽いようです。

……あれ?もしかして反応悪いのはENVY x360本体側が原因?やだなぁもう。ははは。

そんなわけで、ペンの不良は考えにくかったのでPC側の初期不良も疑いましたが、ネット上での情報を探してみると同一モデルである「ENVY x360 13 ay-0050AU」において、「Surface Pro 3のペンでは問題ないものの、MPP2.0の互換ペン(※HPの専用ペンではない)での利用時に筆圧を掛けないと線が引けない。しかしMPP2.0ペンはSurface Pro 3側では問題がない。」という似たような状況になっている方がいらっしゃったので、初期不良なのかどうかなんとも言えない感じがしてきました。

「ENVY x360 13-ay0050AUでMPP2.0ペンだけ筆圧検知が鈍い」というのは自分を含めて3例把握しています。その他詳細なレビューについては情報が少ないです。15インチモデルでは問題なさそうに見えるレビューもありますし、詳細は不明ですが、ENVYは純正ペンが微妙だよって話も耳にしてはいます。

また、ENVY x360の2018年モデルの頃にあった、アクティブペン2の傾き検知機能が、Spectreでは反応するがENVYでは反応しないという問題があった際は、ファームウェアアップデートの過程でペンの感度の調整も入ったという情報もありました。もしこれが初期不良でないのであれば、アップデートに期待したいところではありますが……。

本当に他のペンなら大丈夫なのか

もしENVY x360を購入する予定でペンも使うかもしれないという方は、比較的タッチが軽いと言われているBamboo Ink Plus等を買ったほうが良いのではないかと考えていますが、MPP2.0ペンが相性悪いのかもしれないので怪しいところです。

別のペンを勧めておきながら自分では試さないってのはないだろうということで、Bamboo Ink Plusをヤケになって購入しました。ジッターの生じやすさを考慮すると傾き検知は無いほうがいいかもしれませんし、Bamboo Ink PlusではなくBamboo Inkの方が……?とも考えましたが、ON荷重最優先でPlusの方を選択しました。

ON荷重の軽さという点では最新のSurfaceペンも悪くはないかもしれませんが、いくつかのレビューを読んでみたところ、描き始めの感触はBamboo Ink Plusのが良さそうだと思ったのでBamboo Ink Plusにしました。どちらもそこそこのお値段がしますね。

Bamboo Ink Plusを使ってみる

というわけで、届いたので試してみました。結論から申し上げると、ON荷重については特に変化は感じられませんでした。

ペンの質量が、約12.5gから16.5gと重くなるので、単純に数グラム分の違いはあるような気がしないでもないですが、描き始めの反応しづらさには違いがないです。

Bamboo Ink Plusの利点を挙げるならば、異なる種類のペン先に交換可能であることと、Bluetooth接続してペン上部のボタンでWindows標準のペンのショートカット機能が使えるというところでしょうか。また、HP MPP アクティブペンには、ペン先にほんの僅かな遊びがある(※沈み込むわけではない)のでペン先に触れてみるとカチャカチャと鳴りますが、Bamboo Ink Plusではそういうことはないです。

AES対応デバイスでの利用であればドライバのインストールで筆圧調整が可能かと思われますが、ENVY x360 13はMPPなので筆圧調整はありません。ペイントソフト等アプリケーション側で個別に対応することになります。サイドボタンの変更はHP Pen Controlで代用できました。

もう少し情報を取ってみる

体感ではなく、もう少し数値的なものを見てみたいということで、現在の筆圧などの情報が取れるソフトウェアがないか探してみたところ、オープンソースのペイントソフトである「Krita」にTablet Tester機能が用意されていました。

描き始めの具合はHP MPP アクティブペンとBamboo Ink Plusとで大きな違いは見られず、筆圧を検知して描画を開始した時点では筆圧4%前後を記録しています。1%未満を示すときもありました。描き始めは微妙すぎてさっぱりわかりませんが、明らかな違いがあるとすれば、HP MPP アクティブペンの方が、Bamboo Ink Plusよりも少ない筆圧で最大筆圧まで到達できるというぐらいでしょうか。

もうひとつハッキリとしていることは、どちらもペンの自重だけでは全く反応が見られなかったということです。ちなみに、古いN-Trigペンは乾電池分それなりな重量がありますが、ペンの自重だけで30%の筆圧が記録されます。

大変精度の悪いやり方で申し訳ないのですが、1円玉をペンの上部に乗せていき、どこまで乗せると反応しだすのかも試してみました。HP MPP アクティブペンでは8枚、Bamboo Ink Plusでは6枚ぐらいで反応しだしました。やり方が悪いので数gの誤差は出ますが、ENVY x360 13で使う場合、恐らく20gぐらいは筆圧をかけないといけないようです。丁度、「Wacom One 液晶ペンタブレット 13」がON荷重19gで扱いづらいというのと似たような感じではないかと思います。もっとも、ENVYではどのアプリケーション上でも変化はなさそうですが。

4万円台で買える「Wacom One 液晶ペンタブレット13」をプロ目線でチェックした (2/4) – ITmedia PC USER

では、ENVY x360 13ではなく、他の機種ではどうなのかというと、富士通のSTYLISTIC Q702/Gでは自重どころか触れた瞬間に反応します。HP MPP アクティブペンとBamboo Ink Plusのどちらも、ペンの自重のみでは16~18%程度の筆圧がかかっており、フェザータッチでは1%未満の数値がしっかりと記録されます。ON荷重の具合はCintiq Pro 13とプロペン2の組み合わせと同じぐらいであると感じられました。(おい、良いペンじゃないか!)

はてさて、どうしたものか……。最新のSurfaceペンでは大丈夫みたいという話も2件ほど出てきてるので、現時点においての最適解はSurfaceペン……?

ブルーの芯を使ってみる

Bamboo Ink Plusには替えの芯の中に「ブルーの芯」が付属しています。

一部のデバイスにおいて、適切に描画できないなどの互換性に問題がある場合はこの芯を利用するように案内がされています。

ジッターがマシになるといった話も聞きますね。このブルーの芯でも傾き検知は機能していました。

ENVY x360 13と合わせて利用したところ、心なしか描きやすくなった感覚があり、線画作業時もストレスが減ったように思います。ON荷重は特に変化がないか、気持ち軽くなった気がする程度の違いでしょうか。1~2g軽くなったような、なってないような……そんな感じです。

ずっと使っていると気にし過ぎのように思えてきましたが、他のデバイスで使ってみるとやはり明らかな違いがあります。ペンがオマケであり、ただのメモ用だと言うのであれば文句は言いませんが、クリエイティブな人達へ向けて「細かい部分までこだわりを」と謳っているのであれば、純正ペンでの挙動はもうちょっとなんとかなってほしいなと思います。ENVY x360 13の処理性能やディスプレイの美しさにはとても満足しているだけに惜しいです。

Amazon

2020-07-22:Bamboo Ink Plusを試したことと、Kritaでのテスト内容を追記。ファームウェアもF.07からF.11に更新(変化なし)

2020-07-23:替え芯であるブルーの芯をテスト。Windowsも2004へ更新。