2021年4月8日発売のZTE製スマートフォン、「Libero 5G(A003ZT)」のレビューです。
何故今になって取り上げるのか?それは機種変更が安かったからという他ありません。1,980円ですからね、ついね。(なんて奴だ)
もちろん、メインで真面目に使うつもりでいるならば、発売されたばかりにもかかわらず、約1万円で機種変更できる「AQUOS wish」を選ぶのが無難なところでしょう。あちらは「Snapdragon 480 5G」ですが、今回レビューするLibero 5Gの「Snapdragon 690 5G」と同等または少し上回る程度のパワーがありますので、性能面での不安はあまりないことかと思われます。(AQUOS sense5Gでの致命的なやらかしがあったので、信頼できる品質なのかはさておき……。)
そんなわけで、安い以外の理由で選ぶことがなさそうなLibero 5Gですが、今のZTEスマートフォンがどの程度のものなのか、どんな特徴があるのかをご紹介していきたいと思います。
ZTEって?
ZTEは中国のメーカーです。XiaomiやOppo、Huaweiなどの影に埋もれてあまり目立っていませんが、日本国内においてはモバイルルーターでお世話になった方は多いかと思います。
スマートフォンに関しては安物のイメージがあるかもしれませんが、過去にドコモから2画面スマホの「ZTE M Z-01K」が発売されたり、最近だとインカメラがディスプレイに内蔵されている「Rakuten BIG」が登場しています。auからは「ZTE a1 ZTG01」ってのも出てますね。Axonシリーズもそうです。Nubiaブランドで「Red Magic」といったゲーミングスマートフォンも出しています。調べれば調べるほど、そんなの出てたんだ知らなかった……となりますね。(※個人の感想です)
Huaweiと同様にアメリカなどから制裁を受けたメーカーでもあり、一時期国内で発売された既存製品のアップデートなどが受けられなくなるのでは?と懸念されたこともありました。
さて、紹介するほど選択肢に入りにくいメーカーだなぁとなってしまうZTEですが、撤退の相次ぐスマートフォン業界において、今日まで生き残ってきたメーカーでもあります。そんなZTEが作るスマートフォンは今どのようなものとなっているのか、ご紹介できたらなと思います。まぁ、ZTE製品使ったことがないので興味本位でってところが大きいのですが。
ワイモバイル初の5G対応Androidスマートフォン
安さが魅力のてんこ盛りモデル
ワイモバイルのAndroidラインナップの中で、最も安価ながらも5Gに対応し、そこそこの性能と国内向け機能を有しているのがLibero 5Gの特徴です。
レビュー時のバージョン:Android 11 ビルド番号6.0.0_U
Snapdragon 690 5G搭載
Snapdragon 6シリーズとしては最初となる5G対応のSoCを搭載します。
Snapdragon 690 5Gの性能は悪くはありませんが、GPUがAdreno 619Lであるため、Adreno 619のSnapdragon 480 5Gよりも若干劣るようです。何れにせよゲームにはあまり向いていません。とはいえ、当面の間は性能に困ることはないはずです。
Snapdragon 690 5G | Snapdragon 480 5G | |
---|---|---|
型番 | SM6350 | SM4350 |
CPU | Kryo 560 Gold@2.0GHz(2コアCortex-A77) | Kryo 460 Gold@2.0GHz(2コアCortex-A76) |
Kryo 560 Silver@1.7GHz(6コアCortex-A55) | Kryo 460 Silver@1.8GHz(6コアCortex-A55) | |
GPU | Adreno 619L@565MHz | Adreno 619@650MHz |
Display | FHD+(1080 x 2520)@120Hz | FHD+(1080 x 2520)@120Hz |
Memory | LPDDR4x 1866MHz | LPDDR4x 2133MHz |
Modem | X51@DL2.5Gbps UL900Mbps(5G) | X51@DL2.5Gbps UL660Mbps(5G) |
発表 | 2020年6月 | 2021年1月 |
言うまでも無く原神のプレイは厳しいです。それでもウマ娘ぐらいならちゃんと遊べます。デレステも3D標準では時折引っかかるのでゲームプレイに支障がありましたが、2Dであれば問題ありません。譜面が徐々にズレたりなどもありませんでした。
AR Coreにも対応しているので、Pokemon GOのようなARを使ったゲームも楽しめました。
3DMarkベンチマーク結果
Wild Lifeで830、Sling Shotで3196となりました。
ストレージは64GB
ストレージは64GBですので、色々と入れると足りなくなるかもしれません。
いくらかアプリを消したり、アップデートが割り込んでいたりしますが、大体15GB程度使用していました。
SDカードの内部ストレージ化はサポート外のようで、フォーマット時の選択肢が出てきません。内部ストレージ化したい場合は、PCに繋いでadbコマンドを使用しないと利用することができませんでした。
また、内部ストレージ化したSDカードへアプリを移動させようとするとOSが再起動してしまいます。一応、新規インストール時はちゃんとSDカードへインストールされています。(※対応するアプリのみ)
ただ、正直お勧めはしません。再起動した際に壊れたりアプリデータが失われたりしたので、adbコマンドでの強制的な内部ストレージ化はやめておいた方が良いです。
使用したSDカードはA1対応の物です。
内部ストレージのパフォーマンス面については、A1 SD Benchで計測しました。シーケンシャルアクセスが「Read 517MB/s Write 193MB/s」で、ランダムアクセスが「Read 47MB/s Write 26MB/s」でした。速度は十分でしょう。
防水やおサイフケータイにも対応
日本国内向けの仕様として、防水・防塵やおサイフケータイに対応しています。
取り扱い説明書によると、NFC / FeliCaは背面指紋センサーと同じ位置にあります。余談ですが、カメラ横の小さな穴は空気穴です。
防水・防塵に関しては「IPX7 / IP5X」となりますので、防水は浸水に対してのみの保護となります。IPX5やIPX6も併記されていれば流水に対してもある程度対応できますが、Libero 5Gはそれらには対応していません。うっかり水の中に落とした場合は問題ないと思われますが、蛇口から直接流水をかけるなどは避けたほうが良いでしょう。
イヤホンジャックは無し
イヤホンジャックは無く、スピーカーも底部にあるモノラルスピーカーのみとなります。
試供品として、USB Type-C to 3.5mmの変換ケーブルが付属します。DACを搭載しないアナログ方式の物となりますので、もし紛失してしまっても100均の物で代用できるはずです。(未確認)
音周りに関しては特に期待をしていなかったのですが、「DTS:X Ultra」が搭載されており、細かな設定が行えました。
使いたいアプリだけ5Gを有効に
Libero 5Gという名前の通り、5G(n77 / n3 /n28)での通信が可能です。ソフトウェアアップデートで4G転用の周波数(n3 / n28)にも対応したので、発売当初と比べて5G表記を見かける機会が増えました。
5Gとは言うものの、Softbankやauは主に4G転用でエリア拡大をしており、それは端末と基地局間は低遅延ですが高速・大容量ではありません。そのため、あまり5Gの恩恵が感じられないという人も居るかと思います。都市部では高速・大容量で5Gが使えますと言われても、誰もが都会に住んでいるわけではありませんからね。
とはいえ、5Gが使えるときは5Gで使いたいという考えはあるかと思います。Libero 5Gでは、特定のアプリを使用するときだけ5Gを有効にしてバッテリーを節約する機能が搭載されています。
後継機のLibero 5G IIも
2021年12月3日には後継機である「Libero 5G II」が発売されました。SoCがSnapdragon 690 5GからDimensity 700に変更され、 eSIMも使えるようになっています。
しかし、後継機を選ぶだけの違いがあるかというと微妙なところです。マイナーチェンジに留まっています。対応周波数もほぼ一緒なのですが、FDD-LTEのBand 28が削られてしまったため、そこが若干のデメリットとなっているようです。
ミドルレンジ相当の無難なカメラ
安価な機種ですので、カメラ品質にはあまり期待できませんが、低品質ということはありません。あまり撮影する機会がありませんでしたので、今回は軽く触れる程度に留めておきます。
カメラのUIはよく見かけるような配置です。写りも変に潰れたりはしていません。
標準の撮影モードに加え、ポートレートとスーパーナイト、背景ぼかしが項目にあります。その他を開くと、マニュアルモードやパノラマ、モノカラーモードといった撮影機能もありました。
ウォーターマークモードでは、プリセットの中から好きな透かしを選んで、文字と表示位置の編集ができます。(誰得なんだろうか)
明るい場所ではフォーカス合わせや撮影後の品質に問題は感じられず、クセもなく扱いやすいカメラであると感じました。
しかし、暗所での撮影となると話は違います。ノイズが目立ちますし、そのままでは暗く写ります。スーパーナイトモードにすると明るく写りますが、やはりノイズが目立ちます。
紫色のベンチだけをスーパーナイトモードで撮影してみましたが、全体的にモヤがかかり、色味も紫がかった仕上がりになってしまいました。
すっかり忘れてましたが、広角レンズもあります。
必要十分な実力がありますが、やはり暗所撮影はハイエンドモデルの領域ですね。
独自のMiFavor UI(MyOS)搭載
Libero 5GはカスタムUIである、「MiFavor UI 10.5」を搭載しています。AOSPライクではないところが、中華スマホらしさを感じる部分ですね。Libero 5Gでは、Android 12へのアップデート時に「MyOS」に名称変更されました。
カスタムされたシステムUI
アイコン等はもちろん、通知やクイック設定パネルの見た目がAOSPから変更されています。また、システムナビゲーションもカスタマイズされているので、若干挙動が異なります。
3ボタンナビゲーションの場合は、戻るボタンとタスクボタンの位置を入れ替え可能です。
カスタマイズされているといっても、全体的に控えめなデザインとなっていて、使い勝手にクセはないです。ダークモードに非対応のアプリを無理矢理ダークモード化したり、強烈な省電力機能でアプリをバンバン落としたりといった行儀の悪さもありません。割と普通です。
誤タップ防止機能やその他最適化など
画面端に触れたときに、誤反応しないようにする設定があります。細かなところではありますが、あると嬉しい機能ですね。
Libero 5Gには左上にパンチホールが開いていますが、フルスクリーン表示設定を行うと、ノッチを考慮していないアプリでも全画面で表示ができるようになります。
ノッチに対応していないアプリは、ノッチ部分が大きな黒帯となってしまって、全画面にはできないのですが、強制的に全画面にできるというのはありがたいですね。アプリによっては文字やボタンが隠れたりしますが……。
独自のバッテリーセーバー
中華スマホはバッテリーを保たせるために色々な制限を掛けたがる傾向にあります。バックグラウンドに回ったアプリを落としたり、通知に制限を掛けたりとその手段は多岐にわたります。
MiFavor UIにも独自の省電力機能が搭載されていますが、標準状態においてはそれほど主張してこない感じでした。
省電力モードにすると制限が掛かるのはもちろんですが、そうでないときにもバックグラウンドアプリの最適化をする設定が存在します。
個人的に、MiFavor UIはきつめの制限は掛けてないように感じられます。利用状況に応じて制御されるようですが、今のところ通知などに常駐しているアプリが落ちていたことはないです。XiaomiのMIUIだと結構容赦なく落とされるので、除外設定をしないといけないのですが、MiFavor UIは気に掛ける程ではないと思います。
但し、Libero 5Gはメモリが4GBしかないので、単純にメモリ不足で落とされることはあると思います。メモリ容量に見合った使い方を心掛けた方が良いですね。
Android 12 アップデート
2022年8月15日にAndroid 12へのアップデートが配信されました。
MyOSに名称変更されていたほか、カラフルさが増してるような感じがしますね。所々変わっているようなのですが、常用していなかったので具体的な変更点はちょっと……。
思いのほか普通のスマートフォン
価格が安いことや、中華スマホ特有の独自UIを採用していることなど、不安要素はありましたが、思いのほか悪くありません。
ZTEのスマートフォンは他社と比べるとあまり目立っていませんが、しっかりと作り込まれているように感じました。重箱の隅をつつけば何かしらは出てくるとは思いますが、目立った不満点は無く、至って普通のスマートフォンです。
ワイモバイルはシニア向けの宣伝や施策を行っているように見受けられますし、かんたんスマホ以外の選択肢としては、Libero 5Gのような大画面でクセの少ない安価な機種というのもありなのかなと思いました。
2022-09-13:Android 12へのアップデート情報を追記
2022-11-18:ちょっとした手直し